著者
本宮 真 渡辺 直也 紺野 拓也 安井 啓悟
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.52-57, 2018 (Released:2018-06-23)
参考文献数
14

北海道における労働災害(労災)の現状は,致死的な災害の対策により死亡者数は減少傾向にあるが,一方で非致死的な労災事故対策は不十分とされている。北海道十勝管内における非致死的な労災外傷の状況を明らかにするため,十勝管内で唯一3次救命センターを備えた総合病院である当院の整形外科における労災外傷の現状を調査し,多数回手術症例に関して検討した。2013年11月~2016年7月までの整形外科受診患者のうち,労災保険を利用して加療を行なった全患者を対象とし,年齢・性別・職業・受傷機転・受傷部位(上肢・下肢・脊柱)・疾患名・手術回数を調査した。全労災症例数は818件あり,平均年齢は47歳(16~82歳)であった。受傷部位は上肢482件,下肢273件,脊柱123件と上肢の外傷が最多であった。371件に手術が施行されており,3回以上の手術を要した重度症例は37件(上肢28,下肢11)であった。職業は1次産業が19件,2次産業は14件で,受傷原因は農工業機械による巻き込まれが19件であった。多数回手術例は,上肢複合組織損傷例または軟部欠損を伴う重度下肢外傷例のいずれかであった。重度上下肢外傷は軟部組織損傷を伴うため,複数回の手術を含む長期の加療が必要となる。今後より詳細に労災外傷の状況を検討し労災外傷の発生予防策を検討するとともに,積極的な治療による後遺症の軽減,および職業復帰支援を計画していく予定である。