著者
綱井 徳夫
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.239-250, 1981-09-01
被引用文献数
12

日本稲の主要70品種の感温性,感光性,基本栄養生長性の近似値を人工光環境調節装置を用いて調査し,各地域品種の特徴を検討した。供試品種を早生・中生・晩生品種群に.3分し,5月1日から15日間隔で3回播種日を変えて栽培し,品種の出穂日数を求めた。これらの品種群の出穂性を制御する要因について重回帰分析から以下の結果を得た。北海道地方に分布する品種及び東北と北陸地方の早生種は,感温陛と感光性が弱く,基本栄養生長性は短い。これらは日本稲の早生品種群を構成した。早生品種群の普通栽培下の出穂性の制御に最も強く関与するのは感光性であるが,栽培期問の日長が短い晩期栽培では基本栄養生長性の作用比率は感光性にまさる。しかし感温性は出穂性に関与しなかった。東北地方に分布する品種及び北陸と関東・東山地方の一部の品種は,基本栄養生長性が長く,感温性はやや強く,感光性は中位であり,日本稲の中生品種群を構成した。中生品種群の出穂性に及ぼす感光性の作用比率は,早生品種群より著しく増加し,晩期栽培下においても基本栄養生長性より大きかった。この品種群の感温性もその出穂性に関与しない。西南暖地に分布する帰種及び関東・東山と北陸地方の晩生種は感温性と感光性が強く,基本栄養生長性は短い。これらは晩生品種群を構成した。晩生品種群の出穂性の主要な制御要因は感光性であり,感温性と基本栄養生長性の関与は認められなかった。これより日本稲の出穂性の制御要因は感光性と基本栄養生長性であり,出穂性に及ぼす感光性の作用比率はきわめて大きい。基本栄養生長性の出穂性に及ぼす作用比率は感光性の弱い早生品種群(高緯度品種)ほど大きくかつ栽培期問の日長が短い条件(晩期栽培,低緯度地への移動)ではさらに増加した。また感光性の弱い品種ほど感光性と基本栄養生長性の出穂性に及ぼす作用比率の栽培期の日長変化に伴なう変動は著しい。