著者
綾田 雅子
出版者
共立女子短期大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

ニット地の衣服について、設計の段階で素材の物性的要因を考慮したパターンを得ることを目的とし平成3年度に引き続きニット地の物性と着用シルエットとの関係を検討した。平成4年度は特に平編布の糸の太さと編目密度がニット地の物性に及ぼす影響について詳細に検討した。試料作製に用いた糸は、手編みおよび機械編み用として市販されている中からできるだけ一般的な糸を選択し、羊毛糸2種と木綿糸2種、さらに太さの異なる計8種の糸で家庭用編み機シルバーam・amSK581型を用いて編目密度4段階に変化させた20cm×20cmの正方形試料を編製した。これら29種の試料についてKES-FB計測システムのニット条件に従い、引っ張り、曲げ、せん断、圧縮特性および単位面積当たりの重量の14項目について力学量の測定し、糸の太さ、ループ長および編目密度との関係を検討した。さらに編布の基本力学特性を記述するための式を得るため重回帰分析を行った。得られた結果は次の通りである。1.本実験に用いた編み機では、糸の太さにかかわらず、編目ダイヤルの設定によってほぼ一定の編目密度が得られることがわかった。2.平編地は編目密度が小さくなるほど、また細い糸ほど伸び易く、せん断しやすく、曲げ軟らかくなり、せん断、曲げ特性共にヒステリシス幅は小さくなった。3.本実験に用いた試料の範囲内で糸の太さ、ループ長およwaleとcourseの編目密度をパラメータとしてかなりの精度で平編布の力学量を予測できることが示された。これまでの研究からニット地衣服の設計には風合いが大きな要因として関わっていることが分かってきた。今後は表面特性の計測を加え、川端、丹羽による風合いの変換式を用いて基本風合い値を求め、官能検査による主観評価値との関係を検討していく予定である。