著者
鄭 紹輝 綿部 隆太
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.520-524, 2000-12-05
被引用文献数
3

ダイズ20品種の無処理と老化処理種子(40℃, 相対湿度100%条件で6日放置後室内風乾)について, 20℃24時間浸水後の種子から溶出した糖(フルクトースとグルコース)の量および異なる土壌水分条件(土壌含水率:適湿区13%, 過湿区20%)における出芽率を測定し, 両者の関係を検討した.無処理種子からの糖の溶出量は種子1g当り0.4mg(もやし豆)から11.8mg(シロタエ)まで, 品種によってかなり異なったが, 老化処理種子ではほとんどの品種において増加し, 無処理種子より最高約5倍も多い糖を溶出した.種子からの糖溶出量は, 種子の大きさと有意な正の相関関係がみられ, 種子の老化処理の有無にかかわらず黄色品種で顕著に多かった.出芽率は無処理種子では土壌湿度条件の如何に関わらず良好であったが, 老化処理種子では適湿区で-部の品種, 過湿区で大多数の品種において明らかに低下した.さらに, 出芽率と種子からの糖溶出量の問には, 過湿区において有意な負の相関関係がみられ, 種子からの糖溶出は, 特に老化処理・過湿区で出芽に深く関わっていることが示唆された.なお, 本実験に供試した黒色の4品種においては, 老化処理種子からの糖溶出量が少なく, 過湿区における出芽率も他の品種より高く, 種子の活力が低下しにくい性質を持っているのではないかと考えられた.