著者
武田 立守 吉田 滋 織田 佳代子 広瀬 信吾
出版者
日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.32, no.11, pp.643-648, 1983
被引用文献数
2

窒素レーザーを励起光源とする高感度な蛍光検出器を作製し,フローインジェクション分析法に応用した.このレーザーの光のエネルギーはピーク出力10kWの大きさを持っているため,盲蛍光も大きくなると考えられ,その影響を少なくする手段を考察した.盲蛍光の大きな試料として無処理の血清を,目的とする発蛍光物質としてジヒドロニコチンアミド-アデニンジヌクレオチド(NADH)を選んだ.盲蛍光は主としてたん白質に起因すると考えられるため,O-(ジエチルアミノエチル)-[セルロース](DEAE)-セファロースを充てんしたカラムをフロー系に組み込み,たん白質は保持するがNADHは溶出してくる条件として30mM塩化ナトリウムを含有するグリシン緩衝液をキャリヤー液とした.その結果,血清の約5μを直接注入したとき盲蛍光の80%を除くことができ,残りの20%は反応試薬などで血清を17倍に希釈した液の約5μをフロー系に注入するとこで無視しうる程度の大きさとした.分析対象の一例として血清中の乳酸や乳酸脱水素酵素の測定などに応用した.