著者
美斉津 康民 河上 尚実 八木 満寿雄 瑞穂 当
出版者
The Japanese Society of Swine Science
雑誌
日本養豚研究会誌 (ISSN:03888460)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.1-6, 1980

豚舎設計の基礎となる各種の数値を得ることは, 合理的な構造の豚舎を建設する上で重要なことである。本研究では, 仕切柵の必要とする高さを知る目的で, 豚のとび越し高さ, および, とび越し習性について実験を行ない, 次のような結果を得た。<br>(1) 豚が柵をとび越す動作は, 柵に前肢をかけることから始まり, 後肢をのばして上体をずり上げたあと, さらに床面を蹴るなどして, その反動を利用しながら体の重心を移動してゆき, とび越しを終る。なお, 豚の場合には, 助走して飛越するという行動は全く見られなかった。<br>(2) 強制的に豚を追い出した場合には, 体重40kg台に100cmをとび越した豚が最高であり, 自由条件では80~90kg時点の95cmが最高とび越し高さであった。<br>(3) 性別で見れば, 自由条件では, 去勢豚は雌豚に比べて明らかに高いとび越し高さを示した。しかし強制条件においては, 性別による差は顕著ではなかった。<br>(4) 体発育との関係では, 自由・強制いずれの条件でも, 平均値としては発育の遅れた豚群が優位を示したが, 最高とび越し高さにおいては発育良好群にその事例が多かった。<br>(5) 生後日令との関連でみると, 肥育開始当初は強制条件でのとび越し高さの方が高く, 肥育後半では自由条件の方がとび越し高さが高い。したがって, 種々の管理条件において豚が脱柵する危険性は, 肥育期間全体を通じてほぼ同等であると考えられる。<br>(6) 今回の実験の範囲においては, 肥育豚舎における仕切柵の高さは100cmでほぼ万全であり, 偶発的な脱柵を忍容するならば, 90cmでも実用上問題はないと思われる。