著者
當眞 嗣平 翁長 桃子 桃原 紀子 及川 卓郎
出版者
The Japanese Society of Swine Science
雑誌
日本養豚学会誌 (ISSN:0913882X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.121-129, 2017-10-10 (Released:2017-12-30)
参考文献数
32
被引用文献数
7 9

沖縄県の在来豚であるアグーは,西洋系品種の普及により一時期,絶滅の危機に瀕していたものの,肉質に優れていることが評価され,ブランド豚として注目を集めている。しかしながら,その肉質についての知見は少ない。そこで,本研究では,アグーの品種特性を明らかにするため,アグー16頭(雌6頭,去勢10頭)と国内で広く用いられている三元交雑種(LWD)(デュロック種雄×F1交雑種雌;ランドレース×大ヨークシャー)18頭(雌9頭,去勢9頭)を110 kgまで肥育し,発育,枝肉形質および肉質について調査を行った。発育と枝肉形質に関連する項目については,一日増体量,枝肉歩留りおよびロース面積は,アグーがLWDよりも有意に低かったのに対し,背脂肪厚はアグーが有意に厚かった。肉質に関連する項目については,加熱前の保水性は,アグーがLWDよりも有意に劣ったのに対し,加熱時の保水性を示す加熱損失率は,アグーが有意に優れていた。さらに,筋肉内脂肪含量と圧搾肉汁率もアグーがLWDよりも有意に高かった。背脂肪内層の脂肪酸組成において,アグーはLWDと比べて,一価不飽和脂肪酸含量が有意に高く,多価不飽和肪酸は有意に低かった。さらにアグーの脂肪融点は,LWDよりも有意に低かった。これらの結果から,アグーは国内で広く用いられているLWDと比べて発育や産肉量は劣るものの,特徴的な肉質を持つことが明らかとなった。
著者
飯田 涼介 金子 麻衣 纐纈 雄三
出版者
The Japanese Society of Swine Science
雑誌
日本養豚学会誌 (ISSN:0913882X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.8-16, 2015-03-05 (Released:2015-06-30)
参考文献数
25
被引用文献数
1 2

本研究の目的は,種雌豚の3産次までの生存割合が低い繁殖農場(LRR農場)の若雌種豚の育成法と生涯繁殖成績を特徴づけることと,低い生存割合に関するマネジメント因子を調べることであった。3産次までの生存割合は,3産次まで生存した雌豚数を初交配雌豚の数で割り算出した。若雌種豚の育成法と農場マネジメントについての調査(性成熟前の制限給餌の有無,育成雌豚の飼料の種類,自家育成雌豚の使用割合)を行うために,2008年に同一の生産記録ソフトを用いる115農場に調査票を送付した。回答のあった81農場(70.4%)の記録を2008年に導入された15,678頭の雌豚の繁殖成績と合わせた。3産次までの雌豚の生存割合の下位25パーセンタイル(71.6%)を基に,農場をLRR農場と普通農場に分類した。農場レベルの分析では,LRR農場は普通農場に比べて,分娩割合が3.4%低く,淘汰割合が7.7%高かった(P<0.05)。また,LRR農場は普通農場に比べて,制限給餌を行う農場,育成雌豚に妊娠豚用の飼料を使用する農場の割合が高かった(P<0.05)。さらに,LRR農場の自家育成雌豚の使用割合は,普通農場に比べて29.2%高かった(P<0.05)。雌豚レベルの分析では,LRR農場の雌豚の繁殖障害による1-3産次までの淘汰割合が,普通農場に比べて6.2-11.2%高かった(P<0.05)。しかし,雌豚の生涯平均離乳子豚数における農場グループ間での差は見られなかった(P=0.79)。マルチレベルの比例ハザードモデルでは,雌豚の淘汰ハザードは,性成熟前の制限給餌と高い自家育成雌豚使用割合に関連したが(P<0.05),育成雌豚の飼料の種類とは関連しなかった(P=0.21)。初交配後60週齢における生存確率は,制限給餌された雌豚で80.1%となり,制限給餌されなかった雌豚で84.1%となった。結論として,雌豚の長期生存性の実現に,性成熟前の過度な飼料制限は勧められない。さらに,自家育成雌豚を使用する際に,若雌種豚の繁殖形質の健全性に関する選抜をより厳しく行うことを勧める。
著者
佐藤 勲 井上 正四郎 安藤 忠治 稲沢 昭
出版者
The Japanese Society of Swine Science
雑誌
日本養豚研究会誌 (ISSN:03888460)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.45-49, 1965

1 50頭1群による甘藷畑放牧の結果, 発育および飼料の利用性において, 前報よりはややよくなかった。また, ヨークシャーとF<sub>1</sub>の発育差は, 所要日数で約25日, 1日平均増体重で約160gで, F<sub>1</sub>の有利性を示した。<br>2 放牧中の事故豚は, へい死1頭, 病豚6頭で隔離治療の必要があった。<br>3 50頭1群の放牧に要した所要労力は, 遊休労働時間を除いて, 1頭1日当り1.9分で, 1頭当りの労働費は337円となった。<br>これは, 生産費のうちの2.2%であった。<br>4 飼料費は, 1頭当りを, 甘藷生産費でみると8,371円, 原料用甘藷価格でみると, 9,416円であった。これは, 生産費のうちの54.2%にあたる。<br>5 素畜費は, 最近, 子豚価格の高騰により5,540円を要し, 生産費のうち35.9%をしめている。<br>6 販売費用は, 1頭当り1,661円で, 総売上げの8.3%, 収益の39%をしめた。<br>7 甘藷畑41.74aに, 50頭放牧した場合の経済価値は, 自給飼料利用価172,960円となり, これから甘藷生産費を除くと, 127,482円であった。すなわち, 甘藷1kg当りの利用価は, 20.35円で原料用甘藷価格の約2.5倍になった。<br>8 この場合の139日間における1日平均収益は926円であった。<br>9 枝肉価格と採算の限界では, 枝肉kg当り290円が限界で, 1日1000円の収益を得るためには, 枝肉価格は330円を下まわってはだめで, その場合の飼料費は, 8,363円, 素畜費は, 5,532円が最高の限界となる。
著者
浅井 孝康 上山 謙一 山根 礼吉
出版者
The Japanese Society of Swine Science
雑誌
日本養豚研究会誌 (ISSN:03888460)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.1-5, 1968

肉豚の省力管理の一方法として, 生体重20kgおよび50kgから1回に2日分の飼料を夫々給与したA区, B区, 並びに生体重20kgおよび50kgから1回に3日分の飼料を夫々給与したC区, D区および1日2回給与した対照区の発育成績, 飼料消費量, 屠体成績を要約すると次のとおりである。<br>(1) 試験期間 (20~90kg) における試験区の所日要数はD区, C区, B区, A区の順に短かく夫々108日, 114日, 117日, 121日を要し, 1日平均増体重はD区が653<i>g</i>で最も大きく, 次いでC区, B区, A区の順に夫々605<i>g</i>, 599<i>g</i>, 579<i>g</i>であった。対照区は所要日数114日, 1日平均増体重615<i>g</i>で, 分散分析の結果は試験区各区間および試験区各区と対照区の間に有意な差は認められなかったが, 対照区に比較して試験区は発育速度がやゝ劣り, また20kgから開始した場合は50kgから開始した場合より発育速度がやゝ劣る傾向が見受けられた。<br>(2) この間の1頭当り平均飼料消費量は試験区ではD区が243.9kgで最も少なく, 次いでC区, B区, A区の順に夫々259.0kg, 263.5kg, 271.1kgであった。対照区は251.5kgで試験区は対照区に比較して僅かであるが飼料消費量が多い傾向が見受けられた。<br>(3) 飼料要求率はD区が3.46で最も小さく, 次いでC区, B区, A区の順に夫々3.75, 3.76, 3.87で, 対照区は3.59であった。<br>(4) 枝肉歩留はC区が73.52%で最も高く, 次いでD区, B区, A区の順に夫々72.39%, 72.25%, 72.02%で, 対照区は75.04%であった。<br>背脂肪層の厚さは各区とも薄く, 滑らかで良好であった。脂肪層の厚さの平均はC区が2.21cmで最も薄く, 次いでB区, A区, D区の順に夫々2.32cm, 2.75cm, 2.78cmで, 対照区は2.50cmであった。
著者
佐藤 勲 長友 安雄 安藤 忠治 稲沢 昭
出版者
The Japanese Society of Swine Science
雑誌
日本養豚研究会誌 (ISSN:03888460)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.14-22, 1964

1) 豚の放牧による肥育は飼料の利用性, 発育, 斎度, 寄生虫, 皮膚病などにより問題があるとされていたが, 甘藷畑で放牧肥育を実施した結果, 1日平均659g~730gとすぐれた発育を示した。その発育に比較して飼料要求率は3.61~3.92とやや悪るく, 発育にバラツキが見られた。<br>2) 省力管理は期待できる。すなわち, 甘藷の収穫, 調理, 給与の手間がかからずに, しかも飼育管理でも1頭当り, 2時間53分, 1日1頭当り換算すると2分02秒であった。<br>3) 甘藷畑10aに肥育豚を10頭放牧して仕上げることができるかどうかは, 収量と放牧時期, 方法によるが, 本試験の結果では可能であり, 放牧豚はきわめて上手に甘藷を採食し, ロスが少なかった。<br>4) 甘藷畑放牧においては, 体重20kgより開始しても発育の停滞および事故はなかった。<br>5) 放牧期間中数回の降霜があったが, 降霜後の甘藷を採食しても事故はなく, また甘藷の品種による嗜好性の相違があった。<br>6) 肥育末期の舎飼は発育を良好にし, しかも飼料の利用性もよくなった。すなわち, BL区で1日平均増体重が14g, L区で12g半放牧区がすぐれ, 飼料要求率では, BL区で0.25, L区で0.3半放牧区がすぐれていた。<br>7) 甘藷の採食量は多く, 牧区拡張当日はやや過食の傾向があるので放牧方法を検討する必要がある。<br>8) 総給与量 (風乾量) に対し40%の甘藷を採食したが, 皮下脂肪が比較的うすく, 肉質良好, 腎臓脂肪が少なかった。<br>9) 寄生虫の被害は殆んどなかった。<br>10) 放牧のため発生したと考えられる疾病および事故はなかったが, 電気牧柵を利用した放牧であるため, 脱柵の習慣がついたものが生体重70kg時に1頭あった。これは甘藷を堀りながら前進するため架線が高いと知らぬまに脱柵していることから習慣となったものである。
著者
美斉津 康民 河上 尚実 八木 満寿雄 瑞穂 当
出版者
The Japanese Society of Swine Science
雑誌
日本養豚研究会誌 (ISSN:03888460)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.1-6, 1980

豚舎設計の基礎となる各種の数値を得ることは, 合理的な構造の豚舎を建設する上で重要なことである。本研究では, 仕切柵の必要とする高さを知る目的で, 豚のとび越し高さ, および, とび越し習性について実験を行ない, 次のような結果を得た。<br>(1) 豚が柵をとび越す動作は, 柵に前肢をかけることから始まり, 後肢をのばして上体をずり上げたあと, さらに床面を蹴るなどして, その反動を利用しながら体の重心を移動してゆき, とび越しを終る。なお, 豚の場合には, 助走して飛越するという行動は全く見られなかった。<br>(2) 強制的に豚を追い出した場合には, 体重40kg台に100cmをとび越した豚が最高であり, 自由条件では80~90kg時点の95cmが最高とび越し高さであった。<br>(3) 性別で見れば, 自由条件では, 去勢豚は雌豚に比べて明らかに高いとび越し高さを示した。しかし強制条件においては, 性別による差は顕著ではなかった。<br>(4) 体発育との関係では, 自由・強制いずれの条件でも, 平均値としては発育の遅れた豚群が優位を示したが, 最高とび越し高さにおいては発育良好群にその事例が多かった。<br>(5) 生後日令との関連でみると, 肥育開始当初は強制条件でのとび越し高さの方が高く, 肥育後半では自由条件の方がとび越し高さが高い。したがって, 種々の管理条件において豚が脱柵する危険性は, 肥育期間全体を通じてほぼ同等であると考えられる。<br>(6) 今回の実験の範囲においては, 肥育豚舎における仕切柵の高さは100cmでほぼ万全であり, 偶発的な脱柵を忍容するならば, 90cmでも実用上問題はないと思われる。