著者
羽生 浩一
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

ノーベル平和賞が創設された背景に、19世紀における欧米の民主主義、民族主義の隆盛が存在した。時代の混乱と新しい価値観への希求が「平和」という概念を醸成した。平和の概念を広く伝える役割(PR)としてのノーベル平和賞の創設であった。ノーベル平和賞は20世紀の2つの世界大戦、およびその後の冷戦を経て、「欧米の平和賞」から「世界の平和賞」へと賞の意味や役割を、戦略的に変えてきた。ノーベル平和賞は、戦争や紛争を解決はしないが、注目すべき問題がそこにあることに人々の関心を集めさせる。武力を行使せずとも、広報外交的な役割で平和に貢献することが可能であることを示してきたのである。