著者
翟 莎蔚 宮崎 清 鈴木 直人
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.67-76, 2011-11-30 (Released:2017-08-31)
参考文献数
10

本稿は、古代中国の絵画史料にみられる「広告」の様態に関する観察・解析を通して、その特質を読み解き、今日の「広告」のあり方に関する考察を行ったものである。主要な論点は、次のようである。(1)古代中国においては、商業活動の展開とともに、口頭・鳴り物による「音響広告」、陳列・掛物による「実物広告」、旗幟・招牌による「幟牌広告」、貼画・貼紙による「画紙広告」など4種類の「広告」がみられた。(2)それら4種類の「広告」は、人びとを惹きつけ、市井・街を築く重要な要素になるとともに、人びとに豊かなコミュニケーション文化をもたらした。(3)それら4種類の「広告」は、いずれも、情報の送り手と受け手との間の双方向コミュニケーションが担保され、「人間臭」「人間性」を順守したものであった。(4)古代中国にみられた「広告」の原初的容態は「広告」の本来的姿を象徴するもので、今日の「広告」のあり方に関する多様な示唆を内包している。