著者
肥塚 肇雄
出版者
日本保険学会
雑誌
保険学雑誌 (ISSN:03872939)
巻号頁・発行日
vol.2018, no.641, pp.641_67-641_89, 2018-06-30 (Released:2019-03-28)
参考文献数
52
被引用文献数
1

近時国交省の自動運転の責任に係る研究会報告書が公表された。そこでは,保険会社等が事故被害者に人身損害に関する賠償金等の支払後,メーカー等に求償するスキームの構築が案として示され,記録媒体装置の装備等の事故原因究明体制の整備が検討課題とされている。しかし現行実務を前提にすれば,ハッキング等による事故では「運行供用者」該当性の段階でも争いが生じるおそれがあり,事故原因究明体制を敷いて民事責任を確定する方策は被害者救済が後退するおそれがある。そこで,メーカー等の製造物責任等免責制度を創設し,事故原因究明と民事責任の確定とを切り分けることによって求償関係の複雑さを回避する民間ベースの自動運転車事故に特化した新しい保険商品(自動運転傷害保険)が開発されれば,被害者(自損事故被害者=保有者も含まれる)救済は維持されるのではないかと考える。