著者
藤野 成美 脇﨑 裕子 岡村 仁
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.2_87-2_95, 2007-06-01 (Released:2016-03-31)
参考文献数
40

本研究の目的は,精神科における長期入院患者の苦悩の訴えの構造を明らかにし,その概念分析を行うことである。対象は,精神病院に5年以上入院中であり,本研究に同意の得られた男性26名,女性8名である。参加観察及び半構成的面接を行い質的記述的研究を行った。その結果,精神科における長期入院患者が経験する苦悩として,【孤独感への脅威】【精神疾患を抱えて生活する苦悩】【社会適応能力の低下から生じる生活の困難性】【実存性が脅かされることへの不安】【自己受容性の低下に伴う苦悩】が抽出された。苦悩とは生きる過程におけるその人の信念や価値態度,患者の認知的な要素と深く関連している。そのため,患者の苦悩を評価することは,患者のQOL向上の一端を担う重要な精神的ケアであることが示唆された。