著者
藤野 成美 脇崎 裕子
出版者
日本精神保健看護学会
雑誌
日本精神保健看護学会誌 (ISSN:09180621)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.105-115, 2010
参考文献数
28

本研究の目的は,高齢期の長期入院統合失調症患者がとらえる老いの認識と自己の将来像について明らかにし,看護実践への示唆を得ることである.研究対象者は,精神科病院に10年以上入院中である65歳以上の統合失調症患者7名であり,半構造化インタビューを実施し,質的帰納的分析を行った.その結果,老いの認識は「加齢に伴う心身能力の衰え」「精神科病院で老いていくしかない現状」「満たされることのない欲求の諦め」「死に近づく過程」であり,自己の将来像は「期待が心の糧」「成り行きに身を任せる」「将来像を抱くことを断念」であった.長期入院生活で老いを実感した対象者が語った現実は,社会復帰は絶望的であるという心理的危機状況であったが,現状生活に折り合いをつけて,心的バランスを保っている心情が明らかとなった.退院の見通しがつかない現状であるが,その人がその人らしく生きていくために,少しでも自己実現のための欲求を満たすことができるよう支援する必要がある.
著者
藤野 成美 脇﨑 裕子 岡村 仁
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.2_87-2_95, 2007-06-01 (Released:2016-03-31)
参考文献数
40

本研究の目的は,精神科における長期入院患者の苦悩の訴えの構造を明らかにし,その概念分析を行うことである。対象は,精神病院に5年以上入院中であり,本研究に同意の得られた男性26名,女性8名である。参加観察及び半構成的面接を行い質的記述的研究を行った。その結果,精神科における長期入院患者が経験する苦悩として,【孤独感への脅威】【精神疾患を抱えて生活する苦悩】【社会適応能力の低下から生じる生活の困難性】【実存性が脅かされることへの不安】【自己受容性の低下に伴う苦悩】が抽出された。苦悩とは生きる過程におけるその人の信念や価値態度,患者の認知的な要素と深く関連している。そのため,患者の苦悩を評価することは,患者のQOL向上の一端を担う重要な精神的ケアであることが示唆された。
著者
福原 百合 藤野 成美 脇崎 裕子
出版者
国際医療福祉大学
雑誌
国際医療福祉大学学会誌 (ISSN:21863652)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.36-49, 2013-10-31

本研究の目的は,精神科病棟看護の経験を持つ精神科訪問看護師を対象にして,精神科長期入院患者の退院促進および地域生活継続のための看護実践上の課題について明らかにすることである.長期入院患者の看護経験を含めて精神科病棟勤務歴が3年以上あり,さらに精神科訪問看護経験を持つ看護師とした.対象者に対して半構成的面接を行い,面接内容は質的帰納的に分析した.結果は,精神科訪問看護師が抱く精神科長期入院患者の退院促進における看護実践上の課題として【管理体制からの脱却】【患者の将来を見据えた退院支援の在り方】であった.精神科長期入院患者を地域で支援する際に精神科訪問看護師が直面した課題として示されたのは,【倫理的配慮に基づいた訪問看護実践の難しさ】【利用者周囲との関係調整の役割】【地域で生活する精神科長期入院患者に対する固定観念】であった.看護師が自分自身の価値観を優先するのではなく,患者個人がどのような人生を生きたいのか自分自身で選択し,決定していく姿勢を支持することの重要性が示唆された.
著者
鎌田 ゆき 藤野 成美 古野 貴臣 藤本 裕二
出版者
日本精神保健看護学会
雑誌
日本精神保健看護学会誌 (ISSN:09180621)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.70-79, 2020-06-30 (Released:2020-06-30)
参考文献数
23

本研究の目的は,多職種チームにおける精神障がい者アウトリーチ実践自己評価尺度を開発し,その信頼性と妥当性を検討することである.医療・福祉の専門職を対象に,無記名自記式質問紙調査を実施し,199データを対象として分析を行った.探索的因子分析の結果,【多職種チーム内における支援計画の遂行】【対象者の生活機能の把握】【対象者のリカバリーに向けた支援】の3因子20項目構造となった.本尺度は,検証的因子分析において許容できるモデル適合度であり,基準関連妥当性において有意な相関がみられた.Cronbachのα係数は許容範囲であり,内的整合性を確認した.よって,本尺度における信頼性・妥当性は,統計学的に許容できる尺度であると示唆された.
著者
山口 扶弥 藤野 成美 梯 正之
出版者
広島都市学園大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011-04-28

出産後5日~6ヶ月に母親のうつ状態を縦断的に調査し,産後支援のあり方を検討する.研究協力が得られた産婦人科に通院中の妊婦に無記名自記式質問紙調査を実施.調査項目は母親の抑うつ傾向,生活上の困難,必要な支援等とした.分析方法は日本語版EPDSを用い,従属変数をうつ傾向有無,独立変数は各質問項目とするロジスティック回帰分析を行った.配布数170名,有効回答は101名(回収率59.4%).うつ傾向の者は,産後2週間で20.8%,5日で19.8%と多かった.産後5日は母親自身の気持ちや体調が影響しているが,産後14日は生活環境,子どもを世話する上での悩み等に変化し,初産婦はうつ傾向になりやすかった.