著者
臼井 冬彦
出版者
北海道大学観光学高等研究センター
雑誌
観光創造研究
巻号頁・発行日
vol.4, pp.1-18, 2008-10-31

1936年のILO52号条約と同年のフランスのバカンス法の制定による週40時間労働と併せて、法定制度として主要先進国で発展してきた有給休暇制度であるが、日本における法定有給休暇制度は主要な休暇制度先進国との比較で大きく見劣りするものとなっている。付与される日数が見劣りするだけでなく、実際に取得されている日数が50%を割る実態を比較すれば、さらにその差は大きくなってしまっている。さらに、未取得の有給休暇が1 年後には時効で消滅してしまうこと、未取得分の有給休暇の買上げ制度の問題が、労働問題としても経営問題としても取り上げられることはなかった。観光立国が叫ばれる中、観光を含めたレジャー活動に及ぼす休暇の影響の観点から、有給休暇制度の制度そのものの考察ではなく、グローバル化が進む中で行われている企業会計のコンバージェンスの視点から日本の有給休暇の未取得分の現状を考察し、主要休暇制度先進国並みに取得率を上げる実質的な方法として労働債務として財務諸表上に反映させるともに、その表裏の関係としての買上げ制度の実施について提案を行う。