著者
臼倉 英治 臼倉 治郎
出版者
公益社団法人 日本顕微鏡学会
雑誌
顕微鏡 (ISSN:13490958)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.31-36, 2020-04-30 (Released:2020-05-09)
参考文献数
22

原子間力顕微鏡(AFM)は探針で試料表面を走査することにより,電子顕微鏡とほぼ同等の分解能で表面の凹凸を計測する顕微鏡である.そのため,水中でも計測が可能であり,培養液中で生きている細胞の表面構造を観察できると期待されていた.しかし,細胞表面は常に動いているため,表面構造を描写するには,その運動より速く探針を走査しなければならない.結局,今日の高速AFMの出現まで待たなければならなかった.我々の使用しているAFM(オリンパスBIXAM)は6 μm × 4.5 μmの範囲を1フレーム/10秒の速度で取り込む.現在では必ずしも高速ではないが,細胞表面から伸びる葉状突起や膜直下のアクチン線維の動きを明瞭に捉えることができた.一方,我々が改良した試料作製法であるアンルーフ法や凍結切片法をAFMの試料作製に応用することで,これまで不可能であった細胞内の微細構造を水中で電子顕微鏡同等の分解能で観察することに成功した.