著者
浅井 元朗 與語 靖洋
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.73-81, 2005-06-24
被引用文献数
5

関東・東海地域の麦作圃場におけるイネ科雑草カラスムギ, ネズミムギ(イタリアンライグラス)の発生実態を把握するため, 農業改良普及センターを対象にアンケート調査を行った。また, 発生の著しい茨城県西部を中心に現地圃場の定点調査もあわせて行い, 作付体系と発生実態との関係を解明した。アンケート調査の対象とした全県でカラスムギ, ネズミムギの存在は認識されており, 麦作圃場内への侵入は半数の管区で認識されていた。カラスムギでは埼玉県, 茨城県で, ネズミムギでは埼玉県, 静岡県で被害の著しい地域が存在した。カラスムギの被害は畑麦, 転作圃場で高い傾向があり, 水稲作の入る圃場では被害の拡大は認められなかった。カラスムギの多発圃場では蔓延後に麦類の作付を休止する事例が複数確認された。両草種の侵入には飼料作, 堆肥, 緑化資材からの逸出が考えられたが, 飼料用えん麦の拡散は認められなかった。圃場での拡散には畑条件での麦類の連作と効果的な防除手段の欠如が関与すると考えられた。以上のことから, 上述した侵入, 定着要因の存在する立地では今後カラスムギ等の被害の拡大が懸念される。