著者
舟木 紳介
出版者
一般社団法人日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.55-65, 2007-11-30
被引用文献数
2 2

近年国際的に注目されるようになったオーストラリアのソーシャルワーク研究者たちは,普遍的原理としての社会正義概念を基盤としながら,ポストモダニズム思想を導入し,クリティカル・ソーシャルワークとして発展させてきた・しかし,普遍的な概念を基盤とする社会正義概念とそのようなメタ概念を相対化しようとするポストモダニズムといった2つの相反する価値をひとつのソーシャルワーク理論の価値基盤として統合することが可能なのかという困難な理論的課題があった.本稿は,オーストラリアのソーシャルワーク研究者がクリティカル・ソーシャルワーク理論をどのような経緯をもって導入し,発展させてきたか,その理論的変遷を描くことを試みた.社会正義を基盤とするクリティカル・ソーシャルワーク理論がポストモダニズムの影響を受けて,その相反する価値の統合・共存の一方法として,ソーシャルワークの主体に対して反本質主義の視座を採用したことを論じた.
著者
舟木 紳介
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.33-42, 2005-03-31 (Released:2018-07-20)

1980年代後半以降,社会福祉専門職による「相談」は,社会福祉にかかわる実践のさまざまな分野においても,専門性を伴う行為として認識されるようになった.しかし,高齢者福祉政策における「相談」事業が拡大化する一方で,社会福祉専門職による「相談」は,専門職の公的制度化といった国家政策との関係性から論じられることはあまりなかった.本稿の目的は,社会福祉専門職による「相談」の言説が,高齢者福祉政策との関係において,どのような変遷をたどってきたかについて検討することである.とくに1980年代後半以降の在宅介護支援センターの政策展開における官僚行政を中心とした政策側と実践団体を中心とした実践側の「相談」の言説に注目した.これらの検討をとおして,社会福祉専門職の一機能にすぎなかった「相談」が社会福祉専門職の中心的業務としての「相談」に変化していく変遷を描くことを試みた.