著者
明間 立雄 藤原 清悦 黒坂 光寿 舩橋 利也
出版者
聖マリアンナ医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

ラットで受動的回避学習行い、ミクログリア特異的な阻害薬、ミノサイクリンを投与した。ミノサイクリンを投与したラットは嫌な記憶を早く忘れた。つまり、ミノサイクリン投与によりミクログリアの作用が弱まった結果、嫌な記憶の固定や再生が抑制されたと考えた。学習と関係のあるAMPA受容体のサブユニットを調べた結果、発現量にミノサイクリン投与による変化は認められなかった。しかし、リン酸化は減少する傾向が認められたことからPKAが関与する可能性が示唆された。マウスの受動的回避学習を解析する系を立ち上げた。その結果、ラットとマウスでミノサイクリン投与による受動的回避学習の変容が異なることが示唆された。
著者
明間 立雄 藤岡 仁美 舩橋 利也
出版者
聖マリアンナ医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究では、海馬の高次学習機能の神経基盤にミクログリアが関与する可能性を調べるために、海馬の可塑性を検討している。このために、①Adeno-associated Virus(AAV)発現系の確立、②ミクログリアのみでCreを発現している動物の確立、③解析系の確立、を行っている。①に関しては、Designer Receptors Exclusively Activated by Designer Drugもしくはdiphtheria toxin A subunitをAAVを用いて脳内に発現する系を確立した。すなわち、準備は整った。②に関して、ミクログリアのマーカーであるCD11bに注目していたが、CD11bを発現していないミクログリアの存在が別の系の研究から明らかとなったのでIba1もしくはCX3CRに注目している。後者は、抗体の特異性に問題がある可能性があり、今日まで染色にいたらずCX3CR-GFPマウスの使用を検討している。また、CD68のプロモーターでDREADDを発現するAAVの使用も考慮している。③に関して、受動的回避学習や、Y迷路、オープンフィールドの解析系を確立した。その過程で、本教室の条件では、マウスとラットがIAの再強化や学習の消去過程、情動など、異なることが示唆された。従って、これまで蓄積したデータを生かすためには、やはりラットの方が適しているとの結論に達し、現在、CX3CRのプロモーターでCreを発現するラットを作成中である。
著者
舩橋 利也 美津島 大
出版者
横浜市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究は、申請代表者の「内分泌撹乱物質は、ノン・エストロジェニック中枢作用により、特に前頭葉機能に影響を及ぼし、学習獲得能力を障害する」という仮説を検証するために行った。卵巣摘除成熟ラットに、40mg/kgのビスフェノールA(BPA)、ノニルフェノール(NP)、もしくはオクチルフェノール(OP)を投与して24時間後に、PR mRNA発現量が変化するか否か、ノーザンブロットにより検討した。その結果、前頭葉新皮質ではBPA、NPおよびOP投与によりPR mRNAの発現が有意に増加した。さらに、側頭葉新皮質ではBPAのみがPR mRNAの発現を有意に低下させた。頭頂葉新皮質ではいずれの内分泌撹乱物質も有意な変化を惹起しなかった。BPAの作用の時間経過を検討した結果、前頭葉新皮質のPR mRNA発現はBPA投与6時間後の時点で既に有意に増加し、24時間後の時点でも、発現量は有意に増加していた。エストロジェンもBPAと同様に前頭葉新皮質のPR mRNA発現を有意に増加させたが、その効果は一過性で、24時間後には、もとのレベルまで減少することが明らかとなった。BPAは、後頭葉のPR mRNA発現には影響を及ぼさなかったが、側頭葉では時間経過とともに有意な減少、海馬では24時間後においてのみ有意な増加を惹起した。これらのことから、エストロジェンと異なり、前頭葉新皮質では、内分泌撹乱物質の影響が長期間残存することが、エストロジェン作用との異同であり、また、記憶・学習に関与する海馬に内分泌撹乱物質がなんらかの影響を及ぼすことが明らかとなった。