著者
航空宇宙技術研究所20年史編纂委員会
出版者
航空宇宙技術研究所
雑誌
独立行政法人航空宇宙技術研究所史
巻号頁・発行日
pp.330, 1975-07

当研究所が航空技術研究所として昭和30年7月に40名の陣容で発足してから本年で満20年を迎え、ようやく480名を越す研究所に成長した。この間に,わが国における宇宙開発の進展を見通して宇宙技術の研究を加え,昭和38年に航空宇宙技術研究所と改称し,さらに,昭和40年にはロケット研究センターとして角田支所を設置して今日に至っている。これはひとえに諸先輩の並々ならぬ御努力と関係各位が寄せられた御支援の賜物であって,深く感謝の意を表する次第である。当所は航空,宇宙両分野において,技術水準の向上と先導的研究を推進する研究センターとしての役割と,開発への支援協力を行う試験センターとしての役割とを果さなければならないが,ここに取りまとめた20年史は,この20年間に急激な進展を見せた航空,宇宙の世界的推移の中にあって,当所が指向し推進してきた研究および試験の流れを示すものである。設立の初期には,航空再建の熱意に燃え,全員一丸となって,選音速風胴を始めとして,航空機の進歩に応じうる空力性能,構造強度,原動機等の試験研究設備の整備を急いだ。次いで,これらの設備を活用した研究段階へと進んで成果を挙げてきたが,わが国で開発された中型輸送機YS-11その他幾つかの航空機に対して,当所の研究成果が陰に陽に取り入れられ,現実の姿となって世に出ていったことや,超軽量ジェットエンジンの研究成果が基となってVTOLの実験研究が進展し,また,推進用ファンエンジンの研究開発へと順調に発展しつつあることは喜ばしいことである。然し,近来わが国における航空機の発展は最初の意気込程ではなく,むしろ沈滞しつつあることを憂えると共に我々の努力の至らなかったこことを深く反省している。宇宙開発の一環として当所がロケットおよび人工衛星の研究を開始してから12年になる。研究と開発とは密接不可分の関係にあり,当所は宇宙開発担当機関と常に密接な連繋を保つよう努力しつつ開発への支援協力を行うと共に,次期以降においてはわが国の宇宙開発が自主開発路線を進みうるように,ロケットエンジン,ロケットの誘導制御,人工衛星の姿勢制御等に関して鋭意基礎先行研究を進めてきた。今後も一層の努力を続けて実り多い成果を挙げていくことを念願している。過去20年間を振り返って,諸先輩の御努力の跡を偲び,衷心より敬意を表すると共に今後の研究推進に資したいと考えている。20年史を刊行するに当り,当所の発展に寄せられた皆様の御厚情に深く感謝し,併せて今後一層の御指導ご鞭撻を賜わるようお願いする。昭和50年7月航空宇宙技術研究所長山内正男