著者
航空宇宙技術研究所史編纂委員会
出版者
航空宇宙技術研究所
雑誌
独立行政法人航空宇宙技術研究所史
巻号頁・発行日
pp.387, 2003-09

航空宇宙技術研究所は平成15年10月1日をもって宇宙3機関統合を迎え、宇宙航空研究開発機構(JAXA)として新たな出発を致します。日本は終戦から昭和27年4月まで航空に関する研究開発、生産が禁止されていました。この7年間の空白によって途絶えた航空技術を早急に立ち上げ、遅れを取り戻し、これを向上させることを目的として、当研究所は昭和30年7月に総理府航空技術研究所として設立されました。その後、昭和36年に調布飛行場分室を設置、昭和38年にはロケット研究部を加えて航空宇宙技術研究所と改称し、昭和40年には角田支所を設置してほぼ現在の姿となりました。以来、航空宇宙科学技術に関する国立試験研究機関として、その中核的機能、役割を果たすべく、遷音速風洞や大型低速風洞等の大型設備の整備、YS-11の疲労強度試験、STOL実験機「飛鳥」の研究開発、LE-7液酸ターボポンプの研究開発、飛行船を用いた成層圏滞空試験等で成果を挙げてきたところであります。このような数々の成果の達成は関係各位の航空宇宙技術研究に対するご理解とご支援、ならびに諸先輩の並々ならぬ努力の賜であり、厚く御礼を申し上げる次第です。この機会に、当研究所の誕生から統合までの48年間の研究活動を「航空宇宙技術研究所史」として刊行する運びとなりました。本著を通じて当研究所の職員が過去の足跡を振り返り、将来の発展に資するとともに、日本の航空宇宙分野で当研究所が果たしてきた役割について皆様のご理解を深めることができましたら幸いであります。航空機はいずれ亜音速機から超音速機へ、そして極超音速旅客機へと進むものと思われます。そして宇宙輸送機も使い切りロケットから再使用型宇宙輸送機、有人宇宙輸送機へと進むのも必然のように思われます。そのとき航空機と宇宙輸送機の間に一体いかほどの違いがあるでしょうか。その未来の航空宇宙輸送機の実現と究極の信頼性向上に向けて研究を進めるのが新機関の一つの使命ではないかと考えています。統合後も航空宇宙技術研究の中核として、不易流行の精神をもってプロジェクト研究(ニーズ研究)と基礎研究(シーズ研究)をバランス良く遂行して成果を挙げて行くことを願っております。宇宙航空研究開発機構の益々の発展を心から祈念して航空宇宙技術研究所史刊行にあたってのご挨拶とします。平成15年8月
著者
航空宇宙技術研究所20年史編纂委員会
出版者
航空宇宙技術研究所
雑誌
独立行政法人航空宇宙技術研究所史
巻号頁・発行日
pp.330, 1975-07

当研究所が航空技術研究所として昭和30年7月に40名の陣容で発足してから本年で満20年を迎え、ようやく480名を越す研究所に成長した。この間に,わが国における宇宙開発の進展を見通して宇宙技術の研究を加え,昭和38年に航空宇宙技術研究所と改称し,さらに,昭和40年にはロケット研究センターとして角田支所を設置して今日に至っている。これはひとえに諸先輩の並々ならぬ御努力と関係各位が寄せられた御支援の賜物であって,深く感謝の意を表する次第である。当所は航空,宇宙両分野において,技術水準の向上と先導的研究を推進する研究センターとしての役割と,開発への支援協力を行う試験センターとしての役割とを果さなければならないが,ここに取りまとめた20年史は,この20年間に急激な進展を見せた航空,宇宙の世界的推移の中にあって,当所が指向し推進してきた研究および試験の流れを示すものである。設立の初期には,航空再建の熱意に燃え,全員一丸となって,選音速風胴を始めとして,航空機の進歩に応じうる空力性能,構造強度,原動機等の試験研究設備の整備を急いだ。次いで,これらの設備を活用した研究段階へと進んで成果を挙げてきたが,わが国で開発された中型輸送機YS-11その他幾つかの航空機に対して,当所の研究成果が陰に陽に取り入れられ,現実の姿となって世に出ていったことや,超軽量ジェットエンジンの研究成果が基となってVTOLの実験研究が進展し,また,推進用ファンエンジンの研究開発へと順調に発展しつつあることは喜ばしいことである。然し,近来わが国における航空機の発展は最初の意気込程ではなく,むしろ沈滞しつつあることを憂えると共に我々の努力の至らなかったこことを深く反省している。宇宙開発の一環として当所がロケットおよび人工衛星の研究を開始してから12年になる。研究と開発とは密接不可分の関係にあり,当所は宇宙開発担当機関と常に密接な連繋を保つよう努力しつつ開発への支援協力を行うと共に,次期以降においてはわが国の宇宙開発が自主開発路線を進みうるように,ロケットエンジン,ロケットの誘導制御,人工衛星の姿勢制御等に関して鋭意基礎先行研究を進めてきた。今後も一層の努力を続けて実り多い成果を挙げていくことを念願している。過去20年間を振り返って,諸先輩の御努力の跡を偲び,衷心より敬意を表すると共に今後の研究推進に資したいと考えている。20年史を刊行するに当り,当所の発展に寄せられた皆様の御厚情に深く感謝し,併せて今後一層の御指導ご鞭撻を賜わるようお願いする。昭和50年7月航空宇宙技術研究所長山内正男