著者
船越 幹央
出版者
(財)大阪市文化財協会
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

皇陵巡拝の動向に関して、昨年度に引き続き、各陵およびその周辺における道路等の整備状況、道標等の設置状況などについて現地調査を行い、また関連する文献調査を実施した。昨年度、神代三陵(鹿児島県)のうち可愛山陵・高屋山上陵を調査したが、本年度は残余の吾平山上陵(鹿児島県吾平町)の現地調査を実施した。本研究では、大阪をはじめとする関西の皇陵巡拝団体が各地で道標等の設置にどのように関与していたかが一つの課題となっているが、吾平山上陵の接続道路において、大阪の団体が道標を設置していることが確認された。当該団体は、これまで確認されていない団体であり、その実態については現在不詳であるが今後調査を進めたい。また、関西の天皇陵の接続道路においても各種団体の道標が確認されている。一方、文献調査においても、これまで知られていなかった堺市にも皇陵巡拝団体があることが分かった。この団体は大正末に設立されたものであるが、その組織、構成員、活動内容等の詳細についても、今後調査を進める予定である。さらに、調査の過程で、京都西部の宮内省田邑部に関する文書綴を発見した(個人蔵)。内容は、現地で陵墓を管理する田邑部が宮内省へ提出した書類の写しであり、陵墓の日常管理(現地管理者の雇用、陵墓関係施設の修繕・手入れ、参拝者の日計表など)にかかわるものである。本資料こついては、その重要性に鑑み、所蔵者の同意を得てマイクロフィルム撮影を実施した。内容の分析については、今後他の研究者とも共同しながら進めていく予定である。本年度の調査成果については、昨年度の成果とあわせて、今後論文化するなどして公表していく予定である。