著者
芥川 昌也
出版者
日本人類学会
雑誌
Anthropological Science (Japanese Series) (ISSN:13443992)
巻号頁・発行日
vol.123, no.1, pp.61-66, 2015 (Released:2015-06-20)
参考文献数
16

新教育課程では,これまで高校で学習したメンデル遺伝を中学校で履修することになったが,一遺伝子交雑しか扱わず,検定交雑や特殊な遺伝は扱わない。高校低学年で履修する「科学と人間生活」では遺伝の内容は全く扱わない。高校の低学年で90%以上の生徒が履修する「生物基礎」では遺伝学関連分野は,旧課程のメンデル遺伝から分子生物学へと内容がシフトし,DNA,染色体の基礎,遺伝子の発現,ゲノムについて学習する機会がある。選択で約20%の生徒が履修する「生物」では遺伝子と染色体,遺伝子による発生の制御,全能性といったテーマを扱うこととされている。分子生物学の基礎から応用までを教える過程で,DNAとバイオテクノロジー,ヒトの染色体と病気の遺伝子,出産に関わる案件,遺伝子差別と情報管理の問題に触れる等の工夫が可能である。その中で,教員は生徒たちに,知識以外に必要な倫理的な判断能力を育成する必要がある。