著者
芦田 明美
出版者
神戸大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012-04-01

本年度は、これまでの研究成果をまとめ、博士論文執筆に専念し学位論文の提出に至った。本研究により明らかになった結果を以下に記す。1)共分散構造分析による修学阻害要因の検討から、子どもたちは家庭や社会背景に関わる要因が背景となって毎日の修学を続けることが困難になり、突如学校に通うことを辞め、低い教育達成へと繋がることが分かった。また、現在の職業と初等教育の修了有無には明確な関連性が見られなかった。すなわち、最低限の読み書きができればそれ以上の学年を修了するインセンティブがこの地域にはなく、留年の有無にかかわらず子どもたちは学校を辞めてしまう。2)教育開発戦略および政策、プロジェクトの分析から、諸政策は先の初等教育修了阻害要因について触れているものの、具体的な方略や指針などは提示していない。他方、プロジェクトは諸要因に触れ、具体的な活動も提示し実施している。対象地域で実施されたプロジェクトは、修学の継続に貢献し得ると考えられるが、これまでの諸政策およびプロジェクトは、留年を繰り返し退学してしまう子どもたちを想定しており、すぐに学校を辞めてしまう子どもたちの存在は考慮されていない。3)修学実態年代推移の分析から、修学状況は改善傾向にあることが分かった。他方、問題として残っているのは、1990年代前半入学グループから1990年代後半入学グループにかけての、年度末評価における落第の減少の頭打ちである。さらに、1980年代後半入学者には、留年が一度あるか無いか程度の卒業パターンと、入学後1年ないしは2年未満で学校を去る退学パターンが共存する、Enrollment Divideとも呼ぶべき修学実態が見受けられた。しかし、年度が新しくなるほど卒業パターンは増加傾向にあり、退学パターンは減少傾向にある。1年生の状況は他の学年よりも相対的に望ましい状態になく、特に入学初年度1年生は深刻である。