著者
花岡 永子
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.439-463, 2003-09-30

「"生活の宗教″としてのキリスト教」を二十一世紀の現在において論究するには、キリスト教の内部だけに留まることは不可能である。何故ならば、遅くとも二十世紀後半には物理学においてのみならず各宗教においても、多元性や相補性を視野に入れざるを得ず、更には諸宗教の根源に遡って、諸宗教の始原での「根源的いのち」の経験の視座から各宗教を考察することが必要だからである。今世紀の諸宗教に通底していると考えられる「根源的いのち」乃至は「霊性」の同一経験は、各民族、各国家の文化に基礎づけられた表現やその方法の相違によって大きく相違してきたと理解され得る。そこで本小論では、仏教との比較の中でテーマが考察される。従って、一切の二元性や両極性が超脱された世俗化、更には聖俗1如の境涯が、仏教での「日常底」との比較の中で論究される。