著者
深澤 建次 花崎 泰雄 福岡 安則
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

本研究は,埼玉大学に在籍している留学生(院生,学部生,研究生)30名あまりを対象とする,生活史的な聞き取り調査に基づく事例研究である(オーストラリア,モナシュ大学に私費留学する日本人学生の間き取りも,補足として,掲載している).留学生ひとりひとりの想いを,できうるかぎり忠実に記述したい。彼・彼女は,日本に来る前,日本に来て,そして日本を去るに際して,なにを想い,なにに喜び悩んでいるのかを,彼ら自身の言葉で率直に語ってもらい,それを正確に記録したい.そして留学生活を通じて彼・彼女がどのように変わったのかを把握したい.留学生の日常的内面的世界を,時間の流れに即して,探求する,これがわれわれの,この研究の関心であり,目的である.録音機を使って,被調査者の母語による(補足的に日本語による),ひとり当たり,2時間あまりの間き取りを実施したのは,このためである。録音したテープを極力忠実に,文書化,邦訳し,再構成したものが,以下で紹介する各事例である.それゆえ,われわれは,予め特定のトビックあるいは問題に焦点を絞って,調査する方法をとらない.あるいは留学生に立ちはだかる日本社会の「壁」を摘出することを主限としていない。「壁」にぶつからない留学生の日常世界を,彼らがみるがままに,再現したいと考えたのである.