著者
飯塚 有希 花房 祐輔 大塚 由華利 篠﨑 かおり 外山 洋平 國田 広規 伊藤 有希 牧田 茂
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.BbPI2148-BbPI2148, 2011

【目的】心臓リハビリテーションの普及により心不全に対する理学療法の報告は増えつつある。しかし乳幼児に関しては、治療の進歩に伴い生存率が向上しているにも関わらず、病態が多岐に及ぶこともあり、まとまった報告は少ない。今回、染色体異常や明らかな脳血管障害を認めない、心不全により長期入院を要した乳幼児の理学療法(PT)を実施する経験をしたので報告する。<BR>【方法】発達評価としてはKIDS乳幼児発達スケール(TYPE T)にて全9項目をPT介入前後で評価し、総合発達指数(DQ)を算出し下位項目についてもDQに変換し算出した。<BR>【説明と同意】今回の発表に際し、入院経過等のデータ使用に関して書面にて説明し、ご家族より同意を得た。<BR>【症例1】2歳2ヶ月女児。出生時は問題指摘されなかった。生後5ヶ月時に哺乳不良となり近医受診し、拡張型心筋症と診断された。以後、うっ血性心不全にて入退院を繰り返していた。1歳9ヶ月時に再び心不全増悪にて入院し、20日間人工呼吸器管理となった。抜管後も心負荷軽減のため終日NasalDPAP装着下、厳重な水分管理を要している。<BR>入院前に独歩獲得していたが、心不全治療のため1ヶ月間の鎮静を要し、抜管後も心不全を繰り返し離床が困難であった。啼泣により容易に心拍数の上昇を認めたため、臥位にて本人の許容しうる範囲での手遊びから始めた。抱っこでのギャッジアップ、座位練習へと段階的に移行し、並行してバギー乗車での活動時間延長を図った。心不全増悪徴候がみられる場合には、必要に応じて担当医に確認し、活動量・時間を抑え、臥位での介入とする等で対応した。2歳2ヶ月時にあぐら座位獲得し、バギーにて散歩や食事が可能となった。<BR>【症例2】1歳8ヶ月女児。日齢2日に心雑音を指摘され近医受診し、ファロー四徴症と診断された。6ヶ月時に手術適応となり根治術を施行した。術後、乳糜胸水が出現し胸管結紮術を施行した。それ以降人工呼吸管理となり、10ヶ月時に抜管したが、脂質や水分の過摂取による胸水出現を繰り返し厳密な水分・栄養管理を要している。<BR>術前に寝返り獲得していたが、術後の長期人工呼吸器管理・鎮静を要したことで、背臥位での姿勢管理による全身の筋力低下、胸郭の可動性低下に加え、腹臥位への不快が強くなっていた。またタッチングの機会が減ったことで過敏さを認め、表情も乏しい状態であった。そのため、人工呼吸管理中より介入し、側臥位や半腹臥位のポジショニング、正中指向のリーチ動作、音刺激や声掛けから始めた。抜管後は寝返りや座位練習を中心に実施した。症例1同様、心不全徴候に応じて負荷量を調節した。また家族付き添いとなったため、家族指導も実施した。1歳7ヶ月時に寝返り獲得、座位は支えれば可能、笑顔も多く見られるようになった。<BR>【結果】身体的な発育として、PT介入前後で症例1は身長84c→90cm、体重7266g→6962g、症例2は身長は65c→71cm、体重は6974g→5795gであった。KIDS乳幼児発達スケール(TYPE T)では、症例1でDQ34.4(1歳10か月時)→69.2(2歳2ヶ月時)、症例2でDQ10(10ヶ月時)→35(1歳8ヶ月時)と遅滞はあるものの両者とも発達を認めている。下位項目では、特に運動/操作/理解言語/対成人社会性は症例1で5 /23/64/64→23/69/92/100、症例2で10/10/30/20→30/35/45/40とPT介入前後とも運動項目に比べ、操作・理解言語・対成人社会性の方が高い発達指数の傾向がみられた。<BR>【考察】PT介入前後において運動項目が他項目に比べ遅延した理由として、両症例ともPT介入期間中、成長期に関わらず身長・体重ともに大きな変化なく経過しており、心不全コントロールのため長期低栄養・臥床状態が強いられたことによる身体的成長の著しい遅滞があげられた。それに対して、臥床傾向にあってもある程度の操作や精神面の発達は、運動面に比べて発達獲得しやすいと考えられた。<BR>乳幼児は不調を訴えることできず、負荷量の調節が難しい。しかし、発達に必要な経験をせずに乳幼児期を過ごしている児にとって、精神発達に見合った遊びを取り入れ、可能な範囲での発達援助を行うことが本症例のように緩やかながらも精神・運動発達に繋がっていく可能性が示唆された。<BR>【理学療法学研究としての意義】先天性心疾患を有する小児期の運動療法は、疾患や心機能によって効果が異なり、多様性の面から先行研究のエビデンスレベルはやや低くなっているのが現状である。本研究は、長期の臥床と入院管理を要する場合、病態に合わせた長期的な発達フォローを行っていく必要性を示唆するものである。