著者
川崎 武 浅野 武彦 牧田 茂雄 吉田 忠正 柿沼 光明
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.246-252, 1962-06-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
12

56才の男.食餌性蕁麻疹を二,三度経験した以外にアレルギー疾患の既往なく,家族にもアレルギー疾患はない.ビタミンB110mgの静注後1分以内に急激な血圧降下,冠不全,全身の発赤,顔面蕁麻疹様膨疹をきたし失神した.ノルアドレナリン,プレドニソロンの静注および酸素吸入が奏効し,ショック状態より回復した.ビタミンB1に対する皮内反応強陽性, Prausnitz-Küstner試験陰性,白血球融解現象陽性, ACTHテスト正常であつた,ビタミンB1を用いて減感作に成功にした.減感作後に皮内反応は陰性化した.更にビタミンB1,アリナミン,コカルボキシラーゼ,ピリミジン誘導体4種,サルゾールSおよびチアゾールイエローに対する皮内反応を試み,ビリミジン核を有する薬剤に共通して皮内反応が陽性となることから,本症例においてビタミンB1の抗原としての決定群はピリミジン核残基であろうと推論した.
著者
石原 俊一 内堀 知美 今井 有里紗 牧田 茂
出版者
一般社団法人 日本健康心理学会
雑誌
健康心理学研究 (ISSN:09173323)
巻号頁・発行日
vol.27, no.Special_issue, pp.177-184, 2015 (Released:2015-02-19)
参考文献数
24
被引用文献数
3

Type D personality has recently attracted attention as a psychological factor closely related to the onset and progression of coronary heart disease (CHD). The purpose of the present research was to develop the Japanese version of Type D scale and to evaluate its validity and reliability. Participants (N=291; 133 CHD patients, 158 normal adults) completed questionnaires including the Japanese version of the Type D Scale (DS14), Hospital Anxiety and Depression Scale (HADS), Kikuchi's Social Skills Scale-18 (Kiss-18), and Negative Emotional Suppression Tendency Scale. Exploratory factor analysis of Japanese DS14 revealed two factors (social inhibition: SI, and negative affectivity: NA) comprised of 14 items. Confirmatory factor analysis indicated an adequate index of fitness. In addition, the scale had an acceptable internal consistency (Cronbach's alpha, SI=.862, and NA=.799), as well as adequate reliability. These results indicate that the Japanese version of DS14 is a clinically useful scale for evaluating Type D personality in patients with CHD.

1 0 0 0 OA 食道外科

著者
佐藤 弘 宮脇 豊 李 世翼 桜本 信一 牧田 茂
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.242-245, 2021-12-15 (Released:2022-01-15)
参考文献数
10

周術期早期回復プログラムの1つにEnhanced Recovery after Surgery (ERAS®)という概念がよく知られている. 当初は, 高度侵襲手術の1つに分類される胸部食道癌手術には適用が困難とも考えられていたが, 次第に普及し, 効果的に運用されている. しかしながら, 適用が進むにつれて, 多くの問題点が認められるのも現状と考えられる. 確かに“早期に回復する”ことは重要である. しかし周術期だけのアウトカムがよければよいというものではない. 本来, 本プログラムを適用することによって, 術後6カ月, 1年など中長期的にみても有用であることを証明しなければいけないと考える. また診療報酬上も, 適切に評価されるべきと考えられる. 診療報酬として算定されることになれば, 本プログラムがより多くの施設で適用されるようになり, 医療の質の向上につながることが期待される. 本稿は, 消化器癌の中でも高度侵襲手術の1つに分類される胸部食道癌根治手術を例にとり, ERAS術後早期回復プログラムの問題点について述べたい.
著者
牧田 茂
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.947-951, 2017-12-18 (Released:2018-01-10)
参考文献数
13

心不全患者においては,労作時の過度な換気増大は,息切れとなって症状にあらわれる.これは,換気血流不均衡から生じる死腔の増大と慢性的な肺静脈圧の増加による肺血管障害,気管支の過反応による気道抵抗上昇から生じる.運動生理学的には分時換気量(VE)を増加させている要因は死腔換気量(VD)であり,心不全での呼吸パターンの変化と換気血流不均衡増加の主たる原因となる.運動中の肺毛細管圧の上昇や肺胞壁・間質の浮腫などは肺コンプライアンスの低下を招き,一回換気量増加を妨げる.そこで,VEを増加させるために呼吸数が増加する,いわゆる浅く速い呼吸となって,解剖学的死腔に起因するVDが増加する.運動中の心拍出量の増加が少ないことは,換気血流不均衡によるVDを増加させ,あわせて心不全での運動中のVDを増すこととなり,その結果二酸化炭素排泄量に対するVEが増加する.
著者
櫻田 弘治 浦川 宰 小澤 亜紀子 佐藤 真治 澤 貴広 牧田 茂 間嶋 満 許 俊鋭
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2002, pp.434, 2003

<B>【はじめに】</B>現在、心臓外科術後症例に対する心臓リハビリテーションの有効性は明らかなものである。心臓外科術後早期の短期間での効果も、我々の研究結果において明らかにされている。しかし、この中には改善のみられなかった症例も存在することは事実である。今回、心臓外科術後早期の短期入院での運動療法によって、運動耐容能に改善のみられなかった症例について、その要因を検討した。<B>【対象】</B>2001年9月から2002年9月に当院心臓血管外科にて胸部正中切開による手術後、リハビリテーションを施行した患者のうち、早期離床を目的とした病棟内理学療法施行後、リハビリテーション科での短期入院による運動療法を施行した症例28例(男性:25名・女性:3名、平均年齢63.1±11歳)を対象とした。リハビリテーション科での運動療法は心肺運動負荷試験(CPX)の結果より嫌気性代謝閾値(AT)を決定し、その結果をもとに自転車こぎをおこなった。開始時期は、術後平均病日11.7±4.3、運動療法期間は10.9±4日であった。手術様式別は冠動脈バイパス術14例、弁置換・弁形成術9例、冠動脈バイパス+弁置換術5例であった。尚、術後運動器疾患を合併症した症例は除外した。<B>【方法】</B>運動療法実施後のPeak VOH<SUB>2</SUB>が改善した群(22例)、しなかった群(8例)の2群間において、術前左室駆出率(LVEF)・手術侵襲(手術時間)・術後臥床期間を対応なしのt検定を用いて検討した。<B>【結果】</B>改善した群・しなかった群でのPeak V(dot)O<SUB>2</SUB>は、それぞれ運動療法前:12.3±2.6・12.2/2.2ml/kg/min、運動療法後15.2±3.2・11.5±2.5 ml/kg/minであった。改善した群・しなかった群での、術前左室駆出率(LVEF)は各々、57.4±13.9・63.3±14%、術後臥床期間は2.5±0.7・3.0±0.6日で有意な差はみられなかった。しかし、手術時間は改善した群で263.5±83min、改善しなかった群で344.7±66.9minと有意差が認められた。<B>【考察】</B>心臓血管外科手術は血行動態や心筋虚血の改善、運動能力の向上を目的として行われるが、全症例が同様に改善するわけではない。今回、心臓外科術後約11病日より自転車エルゴメータによる、約10日間の運動療法施行症例中で、運動耐容能が改善しなかった群では、手術時間が長かったことによる、心筋自体の回復、および全身状態安定の遅延が運動耐容能が改善しなかった大きな要因であると考える。<B>【結語】</B>心臓外科術後早期、約11病日より開始した、約10日間の運動療法を施行しても、改善がみられなかった症例の原因としては、手術時間が長いことであった。
著者
佐藤 弘 宮脇 豊 藤原 直人 桜本 信一 岡本 光順 山口 茂樹 小山 勇 牧田 茂
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6, pp.289-293, 2018-12-15 (Released:2019-02-01)
参考文献数
10

生体が手術侵襲で受けたダメージから,より早い回復を目指すことは,術後管理の最大の目標である.術後のより早期に回復を目指す体系的なプログラムにEnhanced Recovery after Surgery(ERAS®)という概念がある.このなかで早期離床を軸とした運動療法は重要な役割を担う.高度侵襲手術の1つに分類される食道癌の運動療法においても,早期離床が重要となる. 胸部食道癌手術の運動療法を早期に施行することは,従来困難と考えられていた.多職種チーム医療による周術期管理により術後第1病日から離床が施行されるようになりその安全性と効果も報告されるようになってきた.しかしながら入院中だけの介入では不十分であり,外来リハビリテーションの確立が急務である.食道癌の運動療法の実際と課題を概説する.
著者
佐藤 祐造 曽根 博仁 小林 正 河盛 隆造 渥美 義仁 押田 芳治 田中 史朗 鈴木 進 牧田 茂 大澤 功 田村 好史 渡邉 智之 糖尿病運動療法・運動処方確立のための学術調査研究委員会
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.11, pp.850-859, 2015-11-30 (Released:2015-11-30)
参考文献数
21

わが国における糖尿病運動療法の現状を把握することを目的に,糖尿病運動療法の実施状況に関して,患者側に質問紙調査を行った.全国各地の専門医に通院中の糖尿病外来患者5,100名に質問紙調査を行い,同意が得られた4,176名(81.9 %)を解析対象とした.診察時に運動指導を受けている患者は食事療法とほぼ同率であったが,運動指導を「受けたことがない」が30 %存在し,食事療法の10 %より高率であった.医師から運動指導を受けている患者が52 %と,コメディカル(理学療法士,健康運動指導士等)による指導は少なかった.一方,食事療法では,64 %の患者が管理栄養士に指導を受けていた.運動療法を実施している患者は約半数であった.医師側(第1報),患者側いずれの調査でも,糖尿病運動療法の指導体制は不十分であり,食事療法と比較して,「較差」が認められた.日本糖尿病学会編集による「糖尿病運動療法ガイドライン」作成を要望する.
著者
深田 和浩 藤野 雄次 網本 和 井上 真秀 高石 真二郎 牧田 茂 高橋 秀寿
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2013, 2014

【はじめに】Pusher現象は,非麻痺側上下肢で接触面を押し,他動的な姿勢の修正に対し抵抗する現象であり,その評価と治療は重要である。Pusher現象を客観的に評価するための方法として,Karnathらが開発したScale of Contraversive Pushing(以下,SCP)が一般的に用いられ,測定再現性や妥当性が良好であることが報告されている。このSCPは,Pusher現象の診断において感度や特異度が優れているものの,Pusher現象の回復の変化における敏感度が低いことが指摘されている。この点に関して,Pusher現象の経時的変化を鋭敏に捉えるためのスケールとして,D'Aquilaらは,Burke Lateropulsion Scale(以下,側方突進スケール)を開発した。この側方突進スケールは,寝返り・座位・立位・移乗・歩行の5項目で構成され,0~17点の範囲でPusher現象の重症度を評価するものであり,ADLやバランスとの関連が高いことが報告されている。しかしながら,新たに開発された評価法は,基準関連妥当性の検証が必要とされるが,従来のPusher現象に対するスケールとの関連を検討した報告はない。そこで本研究の目的は,発症早期のPusher現象例に対して,側方突進スケールと従来のPusher現象に対するスケールとの基準関連妥当性を検証することとした。【方法】対象は,当院に入院し理学療法を処方されたテント上の脳血管障害患者のうち,SCPにてPusher現象ありと診断された25例(年齢66.8±15.5歳(平均±SD),性別:男性19例・女性6例,全例右手利き,左片麻痺17例・左片麻痺8例,測定病日17.3±7.0日,SIAS 26点(中央値),半側空間無視21例)とした。取り込み基準は,JCS1桁かつ全身状態が安定していることとし,Pusher現象の診断には,Bacciniらの方法に従ってSCPの各下位項目>0(合計≧1.75)を採用した。脳損傷部位は,脳梗塞:中大脳動脈領域8例・内頚動脈領域6例・前大脳動脈領域1例,脳出血:皮質下4例・被殻3例・視床3例であった。評価は,理学療法を開始後,座位・起立練習が可能となった段階で実施し,側方突進スケール,SCP,Pusher重症度分類を同日に測定した。各スケールの評価は,当院の脳卒中チームに勤務している経験年数4年目以上のPT3名が実施した。側方突進スケールとSCP,Pusher重症度分類との関連については,Pearsonの積率相関係数を用いて検討し,統計処理にはSPSSver16を用い,有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮】本研究は当院の倫理審査委員会の承認を得て実施し,事前に本人もしくは家族に本研究の内容を説明し,同意を得た。【結果】側方突進スケール,SCP,Pusher重症度分類の合計得点はそれぞれ8.5±2.7点,3.7±1.4点,3.4±1.3点であった。側方突進スケールは,SCPとPusher重症度分類との間にそれぞれ強い正の相関(r=0.821,0.858,P<0.01)を認めた。【考察】本研究により,側方突進スケールは,SCPとPusher重症度分類のいずれとも強い相関があることが明らかとなった。側方突進スケールは,従来のスケールにはない寝返りや移乗の項目が含まれているが,SCPやPusher重症度分類と同様に座位・立位を中心に評価している点やPusher現象に特異的な他動的な姿勢の修正に対する抵抗に重きを置いているため,強い相関が得られたことが推察される。以上のことから,発症早期のPusher現象例における側方突進スケールの基準関連妥当性が示され,Pusher現象を客観的に評価し,経時的変化を捉えるためのツールとしての臨床的な有用性が示唆された。【理学療法学研究としての意義】側方突進スケールは,従来のスケールでは評価できないPusher現象の特性や回復の変化をより詳細に捉えることが可能であり,急性期からの戦略的な治療を考える上で有用な指標となることが期待される。
著者
飯塚 有希 花房 祐輔 大塚 由華利 篠﨑 かおり 外山 洋平 國田 広規 伊藤 有希 牧田 茂
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.BbPI2148-BbPI2148, 2011

【目的】心臓リハビリテーションの普及により心不全に対する理学療法の報告は増えつつある。しかし乳幼児に関しては、治療の進歩に伴い生存率が向上しているにも関わらず、病態が多岐に及ぶこともあり、まとまった報告は少ない。今回、染色体異常や明らかな脳血管障害を認めない、心不全により長期入院を要した乳幼児の理学療法(PT)を実施する経験をしたので報告する。<BR>【方法】発達評価としてはKIDS乳幼児発達スケール(TYPE T)にて全9項目をPT介入前後で評価し、総合発達指数(DQ)を算出し下位項目についてもDQに変換し算出した。<BR>【説明と同意】今回の発表に際し、入院経過等のデータ使用に関して書面にて説明し、ご家族より同意を得た。<BR>【症例1】2歳2ヶ月女児。出生時は問題指摘されなかった。生後5ヶ月時に哺乳不良となり近医受診し、拡張型心筋症と診断された。以後、うっ血性心不全にて入退院を繰り返していた。1歳9ヶ月時に再び心不全増悪にて入院し、20日間人工呼吸器管理となった。抜管後も心負荷軽減のため終日NasalDPAP装着下、厳重な水分管理を要している。<BR>入院前に独歩獲得していたが、心不全治療のため1ヶ月間の鎮静を要し、抜管後も心不全を繰り返し離床が困難であった。啼泣により容易に心拍数の上昇を認めたため、臥位にて本人の許容しうる範囲での手遊びから始めた。抱っこでのギャッジアップ、座位練習へと段階的に移行し、並行してバギー乗車での活動時間延長を図った。心不全増悪徴候がみられる場合には、必要に応じて担当医に確認し、活動量・時間を抑え、臥位での介入とする等で対応した。2歳2ヶ月時にあぐら座位獲得し、バギーにて散歩や食事が可能となった。<BR>【症例2】1歳8ヶ月女児。日齢2日に心雑音を指摘され近医受診し、ファロー四徴症と診断された。6ヶ月時に手術適応となり根治術を施行した。術後、乳糜胸水が出現し胸管結紮術を施行した。それ以降人工呼吸管理となり、10ヶ月時に抜管したが、脂質や水分の過摂取による胸水出現を繰り返し厳密な水分・栄養管理を要している。<BR>術前に寝返り獲得していたが、術後の長期人工呼吸器管理・鎮静を要したことで、背臥位での姿勢管理による全身の筋力低下、胸郭の可動性低下に加え、腹臥位への不快が強くなっていた。またタッチングの機会が減ったことで過敏さを認め、表情も乏しい状態であった。そのため、人工呼吸管理中より介入し、側臥位や半腹臥位のポジショニング、正中指向のリーチ動作、音刺激や声掛けから始めた。抜管後は寝返りや座位練習を中心に実施した。症例1同様、心不全徴候に応じて負荷量を調節した。また家族付き添いとなったため、家族指導も実施した。1歳7ヶ月時に寝返り獲得、座位は支えれば可能、笑顔も多く見られるようになった。<BR>【結果】身体的な発育として、PT介入前後で症例1は身長84c→90cm、体重7266g→6962g、症例2は身長は65c→71cm、体重は6974g→5795gであった。KIDS乳幼児発達スケール(TYPE T)では、症例1でDQ34.4(1歳10か月時)→69.2(2歳2ヶ月時)、症例2でDQ10(10ヶ月時)→35(1歳8ヶ月時)と遅滞はあるものの両者とも発達を認めている。下位項目では、特に運動/操作/理解言語/対成人社会性は症例1で5 /23/64/64→23/69/92/100、症例2で10/10/30/20→30/35/45/40とPT介入前後とも運動項目に比べ、操作・理解言語・対成人社会性の方が高い発達指数の傾向がみられた。<BR>【考察】PT介入前後において運動項目が他項目に比べ遅延した理由として、両症例ともPT介入期間中、成長期に関わらず身長・体重ともに大きな変化なく経過しており、心不全コントロールのため長期低栄養・臥床状態が強いられたことによる身体的成長の著しい遅滞があげられた。それに対して、臥床傾向にあってもある程度の操作や精神面の発達は、運動面に比べて発達獲得しやすいと考えられた。<BR>乳幼児は不調を訴えることできず、負荷量の調節が難しい。しかし、発達に必要な経験をせずに乳幼児期を過ごしている児にとって、精神発達に見合った遊びを取り入れ、可能な範囲での発達援助を行うことが本症例のように緩やかながらも精神・運動発達に繋がっていく可能性が示唆された。<BR>【理学療法学研究としての意義】先天性心疾患を有する小児期の運動療法は、疾患や心機能によって効果が異なり、多様性の面から先行研究のエビデンスレベルはやや低くなっているのが現状である。本研究は、長期の臥床と入院管理を要する場合、病態に合わせた長期的な発達フォローを行っていく必要性を示唆するものである。