著者
稲葉 大地 杉本 龍史 安武 祐貴 上村 吉生 芳澤 朋大 花澤 朋樹 吉原 秀明
出版者
一般社団法人 日本中毒学会
雑誌
中毒研究 (ISSN:09143777)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.319-324, 2022-12-10 (Released:2023-01-26)
参考文献数
11

コルヒチンはグロリオサなどの植物に含有され,痛風などの治療薬として使用されている。グロリオサはイヌサフラン科植物で観葉植物として市販されている。今回,グロリオサの球根を誤食し,中毒症状を生じた症例を経験した。症例は84歳の男性で嘔吐や下痢の症状を生じ,翌日に当院受診し急性腸炎の疑いで入院となった。入院翌日,意識障害と乳酸アシドーシスを認め,全身管理を行ったが入院3日目に死亡した。死亡後に,家族への追加聴取で消化器症状出現前にグロリオサの球根を誤食したことが判明し,尿および血液からコルヒチンが検出され,グロリオサ誤食によるコルヒチン中毒と診断した。コルヒチン中毒は,摂取量によっては急激に多臓器障害を生じ,致死的な経過をたどり得る。中毒症状は非特異的であり,またコルヒチン濃度測定には時間を要するため,診断には詳細な問診がきわめて重要である。