著者
松窪 将平 吉原 秀明
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.626-631, 2020-08-31 (Released:2020-08-31)
参考文献数
2

海上では患者の長距離・長時間の搬送という特殊性を有する。そのため,海上保安庁では,平成17年よりメディカルコントロール(以下MC)協議会を設置・運営し,当院も第十管区海上保安本部と協定を結び,海難救助における救急救命士特定行為の指示を行っている。そのなかにはCPR(cardiopulmonary resuscitation)中止判断基準の指示もある。今回,洋上CPA症例へオンライン指示を通じCPR中止判断基準に基づきCPR中止を指示したところ,上陸先の救急隊が海上保安庁と異なる地域のMCのプロトコールに従ったため,再度CPR再開し搬送,搬送先病院で死亡確認された事例を経験した。海上保安庁のCPR中止判断基準はあまり周知されていない。本プロトコールを病院前救護に携わる機関へ広く周知する必要があるため,本事例の報告を行うとともに海上保安庁のCPR実施判断基準プロトコールの紹介を行う。
著者
下野 謙慎 勝江 達治 佐藤 満仁 野口 航 吉原 秀明 坪内 博仁
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.121-125, 2017-03-01 (Released:2017-03-16)
参考文献数
8
被引用文献数
2 3

破傷風は破傷風菌による感染症で,開口障害や頸部硬直などの症状を呈し,呼吸不全や全身痙攣を来たすと致死的なことがある。呼吸不全や全身痙攣は筋強直により生じ,破傷風患者の治療において重要である。今回,筋強直の緩和のため漢方薬である芍薬甘草湯を破傷風患者3例に投与し,芍薬甘草湯を投与しなかった破傷風患者3例と臨床経過を比較し,芍薬甘草湯の効果を検討した。破傷風患者6例全例が,抗破傷風ヒト免疫グロブリンおよびペニシリンの投与を受けていた。芍薬甘草湯非投与群の3例は呼吸不全を生じ,人工呼吸管理に至ったのに対し,芍薬甘草湯投与群の3例では筋強直の改善が得られ,呼吸不全には至らなかった。芍薬甘草湯は,破傷風患者の筋強直に対し有効な治療法である可能性が示唆される。
著者
稲葉 大地 杉本 龍史 安武 祐貴 上村 吉生 芳澤 朋大 花澤 朋樹 吉原 秀明
出版者
一般社団法人 日本中毒学会
雑誌
中毒研究 (ISSN:09143777)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.319-324, 2022-12-10 (Released:2023-01-26)
参考文献数
11

コルヒチンはグロリオサなどの植物に含有され,痛風などの治療薬として使用されている。グロリオサはイヌサフラン科植物で観葉植物として市販されている。今回,グロリオサの球根を誤食し,中毒症状を生じた症例を経験した。症例は84歳の男性で嘔吐や下痢の症状を生じ,翌日に当院受診し急性腸炎の疑いで入院となった。入院翌日,意識障害と乳酸アシドーシスを認め,全身管理を行ったが入院3日目に死亡した。死亡後に,家族への追加聴取で消化器症状出現前にグロリオサの球根を誤食したことが判明し,尿および血液からコルヒチンが検出され,グロリオサ誤食によるコルヒチン中毒と診断した。コルヒチン中毒は,摂取量によっては急激に多臓器障害を生じ,致死的な経過をたどり得る。中毒症状は非特異的であり,またコルヒチン濃度測定には時間を要するため,診断には詳細な問診がきわめて重要である。