- 著者
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藤井 一枝
花田 嘉代子
三平 和雄
- 出版者
- The Japan Society of Home Economics
- 雑誌
- 家政学雑誌 (ISSN:04499069)
- 巻号頁・発行日
- vol.37, no.9, pp.777-784, 1986
被服設計に役立つ資料を得ることを目的として, 熱的に重要な下半身のスカートに着目し, スカートの形態および丈を変化させた36種のスカートについて, 素材は薄布地のポリエステルデシンを用いて, 立位および椅坐位での局所別熱抵抗およびクロー値を求めた.結果は以下に示すとおりである.<BR>1) 立位では, 一般にスカートの形態に関係なく, スカート丈が長くなるにつれて大腿部の熱抵抗が増大する傾向をもつが, フレアーやギャザーをもつスカートは腹腰部にヒダを有するので, そこに下方から上昇した熱気流が停滞するため, 腹腰部と大腿部の熱抵抗の差はノーマル丈を境として大小関係が逆転する.その傾向はフレアー度やギャザー量が増すほど顕著であった.<BR>2) 椅坐位では, 腹腰部の熱抵抗は立位にくらべて大きくなり, 大腿前面で小さくなるため, 大腿前面と後面との差が立位にくらべて大きい.これは椅坐位により大腿前面の衣服間隙が小さくなるためと考えられた.<BR>3) 立位のクロー値はフレアースカートでは64°フレアーが最大となり, ギャザースカートではギャザー量1倍が最小のクロー値を示した.しかし, 椅坐位ではフレアー度, ギャザー量の増加とともにクロー値は大きくなる傾向がある.<BR>4) 立位と椅坐位のクロー値を比較すると, フレアー度およびギャザー量の小さいとき, 椅坐位のクロー値は立位にくらべて小さいが, フレアー度およびギャザー量を増すと増加する.また, 立位スカートのクロー値はフレアー度やギャザー量の相違よりもスカート丈の影響を強く受ける.しかし, この傾向は椅坐位では明らかではない.<BR>5) 同一被服材料のものでも, スカートの種類を形態別にしないと, クロー値と衣服重量との関係は直線的関係を示さないことがわかった.