著者
芳賀 英明
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.106-118, 2015-09-30 (Released:2020-05-12)
参考文献数
41

本稿では,準拠集団が消費者行動に及ぼす影響について,従来取り組まれてきた「製品・ブランドの購買行動への影響」と,その後関心を持たれている「自己とブランドの結びつきへの影響」「消費者のその他の行動への影響」に分けて整理を行った。従来の研究では,消費者が準拠集団の影響を受ける度合いは,購入する商品の特性や製品の使用される場面によって異なることが明らかにされてきた。その後,準拠集団は注目の高まりを見せているブランド・リレーションシップ研究の中で,自己とブランドの結びつきに影響を与える要因の1つとして再び脚光を浴びるようになった。この潮流の研究では,所属集団/内集団や熱望集団が自己とブランドの結びつきを強める一方,外集団や分離集団が自己とブランドの結びつきを弱めることが明らかにされている。こうした研究成果を受け,近年では準拠集団が製品選択,製品評価,あるいは消費量などに影響を与えることが示されている。「自己とブランドの結びつきへの影響」を中心とした研究は比較的新しいものであり,今後は準拠集団のうち特定の集団に焦点を当てることや,ブランドの持つ特徴の違いに着目することによって更なる展開が期待される。