著者
芹口 真結子
出版者
一橋大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-01

平成26年度では、①史料調査活動や、②学会・研究会における研究報告、③学術雑誌への論文投稿などを行った。まず、①史料調査活動では、平成25年度に引き続き、近世真宗における学僧の民衆教化活動や、異端的教説をめぐる事件に関する記録類、藩政史料などを調査し、デジタルカメラによる撮影などを通じて収集した。具体的には、大谷大学図書館(京都市)で複数回にわたり史料を閲覧したほか、秋田県公文書館(秋田市)、金沢大学附属図書館(金沢市)、金沢市立玉川図書館近世史料館(金沢市)、岐阜県歴史資料館(岐阜市)、長野県下伊那郡阿智村清内路(阿智村)などに出張し、調査を行った。①史料調査活動で得た成果は、②学会・研究会における研究報告や、③学術雑誌への論文投稿といったかたちでまとめた。②に関しては、5月10日に「書物・出版と社会変容」研究会で「異端と写本流通―羽州公巌異安心事件関係記録を中心に―」と題する報告を行った。次に、11月1日に「近世の宗教と社会」研究会で、「仙台藩の施餓鬼供養と地域社会―弘化4年三陸沖大時化を事例に―」という報告をした。最後に、12月10日、日本史研究会近世史部会12月部会で、「俗人の教化活動と教学統制―文化2年羽州久保田清次郎一件を中心に―」と題した報告を行った。③学術雑誌への論文投稿では、平成25年度に掲載が決定した「近世真宗教団と藩権力―19世紀初頭の異安心事件を事例に―」が『史学雑誌』123編8号に掲載されたほか、「異端と写本流通―羽州公巌異安心事件関係記録を中心に―」を『書物・出版と社会変容』17号に投稿し、掲載された。以上を通じて、教説の流布の様相や、ある教説が問題化し異端として排斥されていく過程を分析することにより、近世日本における宗教的異端と正統が、幕藩領主や教団、民衆といった諸主体のせめぎあいのなかで形づくられ、変容していったことを示すことができた。