著者
吉瀬 蘭エミリー 上田 典子 松山 博昭 芹澤 篤
出版者
日本酪農科学会
雑誌
ミルクサイエンス (ISSN:13430289)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.115-123, 2010 (Released:2014-03-15)
参考文献数
19

今日の目覚しい医学の進歩にも関わらず,女性を悩ませる月経痛や月経期の不定愁訴はほとんど改善されていない。乳ホエイ中の代表的な機能性タンパク質であるラクトフェリン(Lf)が月経痛を抑制することが知られている。よって本研究では,鉄イオンを安定に可溶化し,消化酵素耐性を付与した食品用素材である鉄・ラクトフェリン(FeLf)を用いて月経痛および不定愁訴の軽減効果をさらに検証することを目的とした。 月経困難症を自覚している女性18名を対象として,FeLf(312 mg)またはプラセボ錠剤のクロスオーバー試験を実施した。各種評価は月経開始から 4 日間実施し,月経困難症が顕著である月経開始から3日間のスコアを用いて比較した。痛み,月経随伴症および生活に及ぼす影響について,それぞれ Visual analogue scale(VAS)法,Menstrual Distress Questionnaires(MDQ)法および Verbal rating score(VRS)法を用いて評価した。その結果,FeLF 錠を経口摂取した場合,痛みが有意に減少した。また,日常生活の質,すなわち QOL は,FeLF 錠を経口摂取した場合に有意に改善された。よって,FeLf は月経困難症を緩和し,QOL の向上に寄与する可能性が示唆された。