著者
安武 留美 若林 努 Slovic Harold G.
出版者
愛知学泉大学
雑誌
経営研究 (ISSN:09149392)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.177-193, 1991-09

植民地時代のアメリカ社会についてはこれまでに色々な研究が成されており,その解釈は,時代とともに,また心理学・人類学・社会学的手法の導入によって変化してきた。この小論は,魔女狩り(Witch-hunting:政敵を中傷・迫害する)に関する7冊の著書をもとにその多様な解釈を紹介するとともに,17世紀ニューイングランド社会の思想や構造を明らかにしようと試みるものである。この小論では次の7つの文献をとりあげる。1.マリオン・L・スターキー(Marion L. Starkey)のThe Devil in Massachusetts(1949),2.チャドイック・ハンセン(Chadwick Hansen)のWitchcarft at Salem (1969),3.ケイス・トーマス(Keith Thomas)のReligion and the Decline of Magic(1969),4.ポール・ボイヤー(Paul Boyer)とステファン・ニッセンバウム(Stephen Nissenbaum)のSalem Possessed(1974),5.ライル・コエラー(Lyle Koehler)のA Search for Power(1980),6.ジョン・P・デモス(John P. Demos)のEntertaining Satan(1982),7.キャロル・F・カールセン(Carol F. Karlsen)のThe Devil in the Shape of a Woman(1984)。これらの著書で対象としている年代や地域は異なり,トーマスはピューリタンの祖国である16世紀から17世紀のイングランドについて,スターキーやハンセン,ボイヤーは1692-1697年のマサチューセッツ州エセックス郡のセーレム(Salem)について,コエラー,デモス,カールセンはセイレムでの魔女狩りを含む17世紀後半のニュー・イングランド地方について述べている。