著者
若林 教裕
出版者
香川大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2010

生徒の興味関心と科学的な思考力を高めるための教材開発として音の引き起こす不思議な現象に着目した教材開発をした結果、共鳴現象を利用したワイングラスの破壊が成功したので、その実践例を報告する。〈実践1〉音でワイングラスを割る方法(1)選挙カー用のスピーカーを100Wのアンプにつないで使用する。(2)低周波発信器でワイングラスの固有振動数を探し、その周波数にあった音でグラスを共鳴させる。(3)ストローをグラスに入れてその揺れ具合で固有振動を発見する。(4)ストローの揺れ具合が一番激しくなった(ストローがグラスから飛び出るぐらい)ところで、アンプの音量を一挙にあげるとワイングラスが破壊する。固有振動が一致していれば、瞬時に破壊することができる。(動画・画像あり)〈実践2〉「音でワイングラスを割る」実験を盛り込んだ授業実践(1)大きさの違うワイングラスにスピーカーで音を当て、特定のワイングラスしか揺れない現象を演示。(2)特定のワイングラスしか揺れなかった原因を考えさせる。(3)自作の「目で見える共振器」(昨年開発)を使い、課題を解明する実験を行う。(4)高い声には短い棒が、低い声には長い棒が振動するという気づきから、特定のワイングラスにあった振動数の音を当ててやるとグラスが揺れやすくなることを見いださせる。(5)身近なところに共鳴現象があることにふれる。→再度、ワイングラスを揺らす実験を行い、音を大きくするとどうなるか訪ね、ワイングラスを割る実験を見せて、音が引き起こす面白さや不思議さを実感させる。音でグラスを割った瞬間、生徒からは驚きの大歓声があがった。授業後の振り返りにも、身の回りの共鳴現象として、音楽室である特定のピアノ弦をたたくと周囲の楽器が鳴ったり、通る車によって窓ガラスが揺れたりする現象があげられたりして身近な生活との関連も図ることができた。
著者
若林 教裕
出版者
香川大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

原因側と結果側の「変数」の関係に着目することや, 一つの関係を調べるためには多くの変数を適切に制御したり, データを統計的に評価したりすることが科学の世界では重要であることを学習内容に組み込むことで探究する能力・態度の育成に効果が見られた。また, 変数を意識しながら, 関係する条件を一つ一つ明確にしていく教材を開発したり, 変数に着目させるための教師の問いを工夫したりすることで, 条件制御することの意味を実感させたり, 生徒の誤概念を修正したりすることにも有効であることが検証された。以下にその内容(全18時間)を示す。<基礎編(6時間)>1 : 「科学者は何をしているか」→探究学習の視点を与え, 変数に着目する重要性を知る2 : 「変数を見付けるには」→変数を見付ける活動をさせ変数同士の関係を見極める3 : 「パイプ音の高さは何に関係するか」→制御制御の仕方を身に付ける4 : 「画鋲が上を向く確率は」→データを繰り返しとると数値が安定していくことを学ぶ5~6 : 「温泉卵のでき具合は何に関係するのか」→二つの変数が交互に関係して自然現象が起きる作用(交互作用)や失敗を経験させることで, データ取得の重要性を学ぶ<実践編 : 紙グライダーの探究(12時間)>1~2 : 入力(独立)変数と結果(従属)の変数を選出し探究テーマの決定3~8 : 探究 例)「紙の大きさと滞空時間の関係」「羽根の角度と飛距離の関係」など9~12 : 発表の準備と発表会→発表者には入力・結果の変数, データの回数を意識させる<事後アンケート>本プログラム実施生徒45人(肯定的に答えた生徒の%)Q1 : 自ら研究テーマを設定するのは苦にならない方だ? 学習前45%→学習後73%Q2 : 探究の方法は心得ている方だ? 学習前78%→学習後98%理由 : 自分で変数を見つけ多くの変数を制御しながら関係性を見つけられるようになったから理由 : 先生が決めた変数や課題じゃないから, 先生も結果が謎でわからないのが面白い