1 0 0 0 OA 乳酸

著者
若林 秀夫
出版者
The Society of Synthetic Organic Chemistry, Japan
雑誌
有機合成化学協会誌 (ISSN:00379980)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.164-166, 1990-02-01 (Released:2009-11-13)
被引用文献数
1 2

乳酸は, 旧約聖書の創世紀の頃からすでに知られており, 化学的に単離したのはSheele (1780) で, 発酵した牛乳からシロップ状の酸を得て, 乳酸と命名した。またBerzelius (1807) は, 筋肉中よりこれによく似た酸 (d-酸) を分離したが, この二つの酸が同一物質であることはWislicenusにより1873年にようやく証明された。即ちSheeleの乳酸はラセミ体で光学活性のない乳酸であり, 筋肉から得られたものは右旋光性の乳酸(d-乳酸) であった。このように乳酸にはL体とD体の光学異性体と, 光学活性のないDL体が存在する。また乳酸と言えば通常α-オキシ・プロピオン酸CH3CH (OH) COOH (分子量C3H6O3=90.08) のことを言う