著者
佐伯 正夫 若林 隆三 渡辺 成雄 大関 義男 庭野 昭二
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.15-20, 1981
被引用文献数
3 4

新潟県苗場山塊の標高1,000&sim;1,300m,積雪深3&sim;5mの豪雪急斜地において,斜面雪圧によるブナ伐根の脱落現象と雪崩の発生に至るまでの経過を8冬期にわたって調べた.<BR>1.伐根の地上高が大きいものほど,雪圧によって伐採後早い年代に脱落する.<BR>2.皆伐跡地では,雪圧によって伐根が伐採後7年目から転倒しはじめ,10年目には伐根本数密度が当初の半分以下に減少した.<BR>3.伐根本数密度の減少とともに,積雪移動量は増加する.草地化した皆伐跡地の急斜面では,伐根が100本/ha以下になると全層雪崩が発生する.灌木地になった皆伐跡地では伐根が50本/ha以下になると,全層雪崩の危険性が生ずる.<BR>4. 択伐跡地では,たとえ強度な択伐の跡であっても,全層雪崩の発生はない.豪雪急斜地の伐採方式として択伐が特に望まれる.
著者
若林 隆三 伊東 義景 原田 裕介 北村 淳 杉山 元康 明石 浩司 前田 徹 戸田 直人 土屋 勇満 加藤 久智 池田 慎二 D Mark RYAN
出版者
信州大学農学部附属アルプス圏フィールド科学教育研究センター
雑誌
信州大学農学部AFC報告 (ISSN:13487892)
巻号頁・発行日
no.5, pp.107-131, 2007-03

1995年~2004年の10シーズンにわたり,信州大学演習林研究室(現AFC 研究室)では中央アルプスの山岳林標高1300~2700mの比高100m毎の15定点において,毎月積雪全層の断面観測を行った。総数500ピット(深さ平均112㎝,累計558m)のうち,密度を測った雪層数は2610層(平均厚さ15.6㎝)である。観測結果と考察の大要は以下の通りである。1.中央アルプスは厳冬期には麓から気温が低いため,標高にともなう雪質の変化が少なく,造晶系(こしもざらめ,しもざらめ)の雪が多い。多雪年には焼結系(こしまり,しまり)が増加し,寡雪年には造晶系の雪が増加する。2.標高と雪層密度の正相関は液相系のない1月2月の厳寒期に高い。3.積雪が多い厳冬期には,新雪が供給される上層と,長期間の変態を経た下層では,雪質と密度が大きく異なる。下層は圧密により密度が増大し,上層は風成雪により密度が増大する。4.上載積雪荷重と層密度との相関は,焼結系で高く圧密が顕著で,造晶系,液相介在系(氷板,ざらめ)の順に相関が低くなる。5.標高が高いほど,細粒のこしまり雪が出現する。高所では低気温と強風により吹雪で雪粒が粉砕される機会が多いことを,粒度が示している。12~2月の粒度が細かいこしまり雪では,粗いものよりも密度が高い。上載積雪荷重が小さい雪面付近でこの傾向が顕著である。したがって標高が高いほど吹雪頻度が高く,微少な結晶破片の堆積した雪面の隙間に氷の粉塵が充?され,焼結の進行によって高密度の風成雪が生まれると推定される。6.12~6月の月積雪深は標高と1次の正相関を示す(相関係数0.91以上)。一方,積雪の全層密度と標高とは中程度の1次の正相関を示す。これらの結果,毎月の積雪水量は標高との2次曲線関係で増加する。7.積雪深が50㎝をこえると,地面と接する積雪下層の平均温度は0℃に近い。