著者
茂呂 信高 長塚 正晃 藤原 紹生 白土 なほ子 小塚 和人 奥山 大輔 千葉 博 齋藤 裕 矢内原 巧
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.333-339, 1998-06-01
被引用文献数
1

近年, 退行性骨粗鬆症を予防するには性成熟期における骨量をより高めることが重要と考えられている.今回, 超音波骨密度測定装置を用いて思春期女子の踵骨骨密度を測定し, さらに骨代謝パラメーターとして血中Intact Osteocalcin(OC)値, 尿中, Deoxypyridinoline(DPYR)値および初経発来との関係について検討した.[方法]対象は健康な6歳から15歳の女子295名である.骨密度測定は, 超音波伝播速度(S0S), 超音波減衰係数(BUA), Stiffness(ST)を測定した.血中OC値はオステオカルシンキット(ヤマサ), 尿中DPYR値はPYRILINKS-D Assay(METRA Biosystems Inc.)を用いて測定した.[成績]1)SOS値は6歳よりその変動は軽微であるが初経発来後は有意な上昇がみられた.BUA値は9歳より漸増, 初経発来後13歳までその上昇は顕著であり, 初経発来群は未発来群に比し有意に上昇した.ST値はほぼBUA値と同様の傾向を示した.また初経発来後のSOS, BUA, ST値の変化についてはその後3年後に変化が顕著であった.2)血中OC値は6歳から11歳にかけてやや上昇するもその後下降する一方, 尿中DPYR値は11歳より13歳にかけて著減しBUA値と有意な負の相関を示した.OC/DPYR比の推移をみると初経発来により明らかな高値を示した.[結論]BUA値は主に骨の緻密度を, SOS値は骨の硬度を表わすとされている.今回初経発来前後の思春期女子の骨密度の推移を超音波により検討したところ, SOS, BUA値は異なった推移を示したことから, 思春期には骨質の変化が生じており, これらは初経発来によりさらに大きく変化することが示された.またOC/DPYR比は初経発来以後明らかな高値を示しており, 思春期の骨密度の増加と初経発来が関連することが示唆された.