著者
茂呂 和世
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2018-06-11

2型自然リンパ球(Group 2 innate lymphoid cells:ILC2)は、IL-33によって活性化し、IL-2、IL-5、IL-6、IL-9、IL-13、GM-CSFなどの2型サイトカインを産生することで寄生虫排除に働く一方で、気管支喘息をはじめとするアレルギーを悪化させる細胞であることが分かっている。特発性肺線維症患者の肺胞洗浄液でILC2が優位に増加することが2014年に報告されている。我々の研究室で作製したIFNgR-/-Rag-2-/-マウスは、ILC2にとって抑制因子となるIFNgとTregが欠損することで恒常的にILC2が活性化するマウスであるが、このマウスでは肺線維症が自然発症することが明らかになった。これまで肺線維症の研究にはブレオマイシンやシリカなどを気管支内に投与する肺線維症モデルマウスが用いられてきたが、これらの実験系は人為的な線維化誘導マウスであり、線維化が持続しないことから、未病期や増悪期が解析できないことが問題であった。一方で、IFNgR-/-Rag-2-/-マウスは15週齢前後で100%のマウスが肺線維症を自然発症することから、線維芽細胞のコラーゲン産生が始まる前の未病期の解析をすることが可能であり、50週齢前後に呼吸困難により死に至るため、線維化が慢性化する理由を突き止めることが可能なマウスとなっている。本研究では、肺線維症自然発症マウスをscRNA-Seq解析によって解析することで、未発症→発症→重症化という線維化の流れにおいてILC2を中心に肺の細胞がどのように変化していくのかをダイナミックに描き出し、将来的に特発性肺線維症の新規治療法開発につながる研究基盤構築を目指す。