著者
茅根 裕司
出版者
東京大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

次世代宇宙マイクロ波背景放射観測実験Simons Observatoryは、地上CMB観測における第3から3.5世代に位置付けられる実験である。昨年度出版したscience forecast paperでは、主に最初の5年間の観測を目的としたスタディを行った(normal plan)。同時に我々は、次の世代である第4世代地上CMB実験「CMB-S4」の準備を進めている。我々はSimons Observatory自体を容易に拡張できる様に設計しており、本年度はnormalの先として「enhanced plan」の検討を進め、様々なscience caseを前回から拡張した。CMB-S4に繋がるenhanced planでは、現在建設している望遠鏡群の数を増やすことで、sigma(r)=1e-3、ニュートリノ総質量は15 meVまで測定可能であることを示した。これらの検討成果を米国の「Astro2020 APC white paper」として報告した。データ解析の準備としては、Bモード測定時における系統誤差の検討、高性能計算機(High Performance computing)での使用を前提としたパイプラインフレームワークの開発を進めた。後者については、開発を主導しているローレンスバークレー国立研究所(LBNL)に併設されているNational Energy Research Scientific Computing Center(NERSC)の研究者の協力のもと、東京大学で開発に関するワークショップ・ハッカソンを開催した。日本国内の多くのCMB研究者に参加していただき、好評を博した。