著者
松村 健太 細川 愛美 伊藤 大輔 茅野 順子 杉田 祐司
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.73, no.8, pp.457-461, 2020-08-20 (Released:2020-09-20)
参考文献数
19

血尿,元気消失を主訴に来院した犬の左側近位尿管内に占拠性病変と同側の水腎症を認めた.腎盂内減圧処置の後,開腹下で腎臓経由の生検を実施したが確定診断は得られず,病理診断は「移行上皮由来の腫瘍の可能性」であった.減容積により罹患側尿管の疎通は認められ,ピロキシカムを659病日まで投与継続したが,大きな変化がないため投薬を中断した.965病日に症例は元気消失,血尿を主訴に再度来院し,左側尿管の再閉塞を認めた.経過から良性挙動の病変の可能性が高いと判断し,尿管切開により姑息的に腫瘤を除去したところ,病理検査結果は移行上皮乳頭腫であった.術後1年経った現在,再発徴候はなく症例は良好な一般状態を保っている.犬の尿管腫瘤は良性病変についても複数報告されていることから,罹患側の腎臓尿管摘出だけでなく,診断を兼ねた減容積手術も診断・治療選択になる可能性がある.