- 著者
-
茜 拓也
- 出版者
- 情報文化学会
- 雑誌
- 情報文化学会誌 = Journal of the Japan Information-culture Society (ISSN:13406531)
- 巻号頁・発行日
- vol.13, no.1, pp.48-54, 2006-08-31
- 参考文献数
- 27
1990年代半ば以降,インターネットという新しい技術に象徴される情報通信技術の進展によって,ジャーナリズム活動がマス・メディアだけの問題ではなくなった。これまではマス・メディアが発信する情報の受け手に甘んじてきた人々が自分の求める情報を検索したり,対話的に情報を処理したり,自ら情報発信や意思決定の主体になったりするなど,能動的な情報行動が可能となった。また,マス・メディア側も,失った市民の信頼を回復しようと,米国のパブリック・ジャーナリズムに見られるように,このような能動的な情報行動を行う人々との往復運動の中で,オーディエンスとの双方向性,オーディエンス同士の多方向性を重視したジャーナリズム活動を実践し始めた。そこで,本論文では,日本においてインターネットのウェブログを活用しながらパブリック・ジャーナリズムを実践している既存のマス・メディア,特に地方新聞社による新たな取り組みの一つとして,神奈川新聞社のウェブログ「カナロコ」と中国新聞社の「ふれあい」を取り上げる。そして,「世論」という概念から検討し,日本におけるパブリック・ジャーナリズムの一モデルを提示し,その可能性について論じたい。