- 著者
-
茨木 俊夫
- 出版者
- 埼玉大学
- 雑誌
- 一般研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 1986
本研究は自閉症研究の世界的業績のひとつである、ノースカロライナ大学TEACCH(Teaching and Educating Autistic and Communication Handicapped Children and Adults)部のスタッフによって開発された『心理教育プロフィール』を、日本の自閉症や発達障害をもつ子どもの教育上の指針として利用できるように、「日本版」として標準化することを目的としている。研究期間は昭和61年度から昭和63年度にわたる3ケ年である。本研究代表者は、すでに『自閉児・発達障害児教育診断検査』の翻訳版、翻訳改訂版を作成し、検査用具も基本的セットを独自に開発してきたが、このたびの科学研究費補助金により、全国規模の資料の収集と分析を実施することが出来、昭和62年度には、標準化された『自閉児・発達障害児教育診断検査』(日本版)を完成し、出版することができた。さらに昭和63年度には、図版などを含む、標準検査用具も完成させることが出来た。最終年度の課題は、自閉症の鑑別診断に用いられている『自閉症評定尺度(CARS:Childhood Autism Rating Scale)』とPEPの病理尺度を比較し分析することであったが、相互作用の分析などを通じて、PEPの実施場面を利用してCARSの評定を行なう方法を開発することができた。今後の課題としては、次第に多くなっている青年期・成人期の自閉症者のための心理教育プロフィールを作成することがある。これについては、本研究によって作られた全国の協力ネットワークを生かし、新たなプロジェクトを作って、全国規模の養護学校・授産施設などの協力のもとに研究を進めていくつもりである。なお、本研究をすすめるにあたり、ノースカロライナ大学医学部のエリックショプラー教授をはじめとするTEACCH与スタッフが毎年来日し、貴重なディスカッションによってさまざまな刺激を与えていただいたことに、深甚の感謝を表する次第である。