- 著者
-
草壁 雄太
川井 清司
羽倉 義雄
- 出版者
- 公益社団法人 日本食品科学工学会
- 雑誌
- 日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
- 巻号頁・発行日
- vol.60, no.7, pp.323-331, 2013-07-15 (Released:2013-08-31)
- 参考文献数
- 24
本研究では,連続相に高粘度のヒドロゾル,分散相に揮発性のある精油のD-リモネンを用いて,蒸気吹き込み法によりO/Wエマルションを調製した.本研究では,[1]蒸気吹き込み法によりO/Wエマルションが調製されるメカニズム,[2]蒸気吹き込み法により調製したO/Wエマルションが安定化する条件,[3]蒸気吹き込み法の技術的可能性,以上の3項目について検討を行った.その結果,以下の事項が明らかとなった.(1) 図3に示すメカニズムで蒸気吹き込み法によりO/Wエマルションが調製される. (2) 連続相の降伏応力と生成直後の分散粒子の投影面積当たりの浮力との圧力差ΔPが十分に大きい場合,生成直後の分散粒子が浮上することなく連続相中にトラップされ,エマルションの生成・安定化が可能になる.(3) ΔPは連続相の増粘剤濃度および温度に強く依存する.(4) 乳化条件の一つである蒸気吹き込み時間は,連続相温度や連続相の降伏応力に大きな影響を及ぼす可能性があり,蒸気吹き込み法によるO/Wエマルションの調製には,蒸気吹き込み時間の管理や連続相の十分な冷却が必要である.(5) 蒸気吹き込み法により分散粒子が微細かつ一峰性の粒子径分布を有するO/Wエマルションの調製が可能である.(6) 連続相の増粘剤濃度を適切に設定することにより,蒸気吹き込み法を用いてエマルションの分散粒子の粒子径および粒子径分布幅を制御できる可能性がある.(7) 連続相に超高粘度液体を用いた場合にも容易にエマルションの調製が可能であり,処理物(「油水混合物」又は「連続相と分散相」) の粘度上限は従来の一般的な乳化装置の1000倍以上である.