著者
羽倉 義雄 行友 純恵 鈴木 徹 鈴木 寛一
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.9, pp.518-521, 2006-09-15 (Released:2007-09-29)
参考文献数
13
被引用文献数
1 3

鰹節の切削に及ぼすガラス転移温度の影響を検討した.水分11.34%の鰹節をガラス状態(25℃)とラバー状態(70℃)に設定し,それらを鰹節削り器で削り,削り節の歩留り,切削抵抗および切削エネルギーを測定した.切削物量の評価では,ガラス状態よりもラバー状態の鰹節の方が総切削量は多かった.また歩留りについても,ガラス状態よりもラバー状態の鰹節の方が常に高い値を示していた.切削抵抗の評価では,ガラス状態よりもラバー状態の鰹節の方が切削抵抗は小さく,ガラス状態の85~90%程度の切削抵抗でラバー状態の鰹節を切削することができた.切削エネルギーの評価でも,ガラス状態よりもラバー状態の鰹節の方が切削エネルギーは小さく,ガラス状態の77~80%程度の切削エネルギーでラバー状態の鰹節を切削することができた.また比切削エネルギー(1gの削り節を得るために必要な切削エネルギー)についても,ガラス状態よりもラバー状態の鰹節の方が小さく,ガラス状態の25~46%程度の比切削エネルギーでラバー状態の鰹節を削り節に切削することができた.以上の結果,鰹節の切削工程では,ラバー状態の鰹節の方が,効率的に切削が可能であることが明らかとなった.これは鰹節を工業的に切削する際の省力化や歩留り向上の可能性を示唆している.
著者
井口 亮 川井 清司 羽倉 義雄
出版者
一般社団法人 日本食品工学会
雑誌
日本食品工学会誌 (ISSN:13457942)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.13-20, 2012-03-15 (Released:2015-06-18)
参考文献数
18
被引用文献数
1

誘電特性は試料の構造,組成,相,温度などの物理的な要因と関連がある.そのため,これらの物性を利用した測定法は試料の構造を把握する有効な手段となる.また,この測定法では非破壊測定が可能である.この研究において,我々はヨーグルト中の気泡が誘電特性(複素静電容量)に及ぼす影響を調べた.ベースヨーグルトに気泡を分散させることにより試料を準備し,ヨーグルト内の気泡量や気泡サイズが誘電特性に及ぼす影響を検討した.その結果,ヨーグルト内の気泡量の増加に伴って静電容量は増加した.さらに,ヨーグルト内の気泡径の減少に伴って静電容量は増加した.これは,気-液界面における界面動電現象が静電容量の増加に寄与していると考えられる.一方,50 Hz-1 MHz範囲でベースヨーグルトと気泡含有ヨーグルトの複素静電容量の測定を行い,これらの測定値を基にCole-Coleプロットを描いたところ,両サンプルの円弧の大きさに明瞭な違いが見られた.Cole-Coleプロットの円弧部分の周波数範囲内では,空気含有ヨーグルトの静電容量は,常にベースヨーグルトよりも大きかった.以上の結果から,誘電特性の測定によりヨーグルト内の気泡を定量化できる可能性を示すことができた.
著者
羽倉 義雄
出版者
一般社団法人 日本食品工学会
雑誌
日本食品工学会誌 (ISSN:13457942)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.1-12, 2015-03-15 (Released:2015-05-12)
参考文献数
21

食品素材は,一般に複数の組織(部位)から構成されている.各部位は,生物学的機能などの違いにより,化学的組成(水分,たんぱく質含有量,脂質含有量など)が異なることが多い.これらの組織の化学的組成の違いは,材料力学物性の温度依存性にも影響を及ぼす.そこで,食品を構成する組織の材料力学物性の温度依存性を理解した上で,食品の加工温度や加工方法を工夫することにより,従来の方法では困難であった機械的な加工が比較的簡単にできる場合がある.筆者らは,食品素材の温度を制御し,食品を構成する複数の部位の材料力学物性(破壊応力,弾性率,ポアソン比,脆化温度など)を最も加工に適した状態とすることにより,機械的加工を容易にする新たな食品加工技術を検討してきた.本稿では,温度変化に伴う食品素材の材料力学物性の変化を食品の機械的加工処理に積極的に利用する方法について紹介する.
著者
草壁 雄太 川井 清司 羽倉 義雄
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.7, pp.323-331, 2013-07-15 (Released:2013-08-31)
参考文献数
24

本研究では,連続相に高粘度のヒドロゾル,分散相に揮発性のある精油のD-リモネンを用いて,蒸気吹き込み法によりO/Wエマルションを調製した.本研究では,[1]蒸気吹き込み法によりO/Wエマルションが調製されるメカニズム,[2]蒸気吹き込み法により調製したO/Wエマルションが安定化する条件,[3]蒸気吹き込み法の技術的可能性,以上の3項目について検討を行った.その結果,以下の事項が明らかとなった.(1) 図3に示すメカニズムで蒸気吹き込み法によりO/Wエマルションが調製される. (2) 連続相の降伏応力と生成直後の分散粒子の投影面積当たりの浮力との圧力差ΔPが十分に大きい場合,生成直後の分散粒子が浮上することなく連続相中にトラップされ,エマルションの生成・安定化が可能になる.(3) ΔPは連続相の増粘剤濃度および温度に強く依存する.(4) 乳化条件の一つである蒸気吹き込み時間は,連続相温度や連続相の降伏応力に大きな影響を及ぼす可能性があり,蒸気吹き込み法によるO/Wエマルションの調製には,蒸気吹き込み時間の管理や連続相の十分な冷却が必要である.(5) 蒸気吹き込み法により分散粒子が微細かつ一峰性の粒子径分布を有するO/Wエマルションの調製が可能である.(6) 連続相の増粘剤濃度を適切に設定することにより,蒸気吹き込み法を用いてエマルションの分散粒子の粒子径および粒子径分布幅を制御できる可能性がある.(7) 連続相に超高粘度液体を用いた場合にも容易にエマルションの調製が可能であり,処理物(「油水混合物」又は「連続相と分散相」) の粘度上限は従来の一般的な乳化装置の1000倍以上である.
著者
久保田 清 張 戈 羽倉 義雄
出版者
広島大学生物生産学部
雑誌
生物生産学研究 (ISSN:1341691X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.135-143, 1993-12

各種食品のクッキング、殺菌など食品を各種変換、処理する装置を設計し、制御化を行っていくためには、食品のクッキングなど変換、処理する非等温実験を行って、得られる実験データからアレニウス式における速度パラメータを設定していくことが必要になることがある。これまでにジャガイモのクッキング速度式の設定を例として、非線形最小二乗法を用いる方法(久保田ほか, 1981, 1988)と、簡便な手法を用いる方法(岡崎ほか, 1991, 1992, 張ほか, 1993-B)とを用いる研究を行ってきた。本研究では、これまでに示してきた簡便な手法について比較検討を行った。本研究で提案した改良したクッキング値を用いる方法は、簡便な事法の一方法としてクッキング値を用いるこれまでに利用されてきている方法よりも有用であった。岡崎により提案された修正クッキング時間を用いる方法(岡崎ほか, 1992)も有用な方法であった。In order to design and to control various food transforming apparatuses such as for the chemical reactions, cooking, sterilization and so on of food materials, it is necessary to determine the Arrhenius' rate parameters from the non-isothermal experimental data of cooking and so on of food. In previous papers, we have studied the cooking rate equations of potato by various methods such as non-linear least square method (KUBOTA et al., 1981, 1988) and simple methods (OKAZAKI et al., 1991, 1992, ZHANG et al., 1993-B). In this paper, we investigated the determination of the rate parameters in non-isothermal processes by using simple methods proposed in previous papers. The modifyed cook value method in this paper was useful for finding the rate parameters in cooking rate equations. The corrected cooking time method (OKAZAKI et al., 1992) was useful too as simple method.