著者
草岡 章大 岩壁 茂 橋本 忠行
出版者
金剛出版
雑誌
臨床心理学 (ISSN:13459171)
巻号頁・発行日
vol.17, no.6, pp.840-849, 2017-11

セラピーにおける初回面接の重要性は多様な理論に共通しているが,その初回面接でのクライエントの主観的体験を扱った研究は少ない。そこで,本研究では大学付属カウンセリングセンターに来談したクライエントの主観的体験について初回面接直後にインタビューし,質的研究法による分析を行った。その結果,【次への光が見えた】と【セラピーへの幻滅】という2つの上位カテゴリーが見出された。これらから,クライエントが成功と感じる初回面接の特徴として,素晴らしいセラピストとの出会い,クライエントの主体性や自発性の発揮,セラピーの結果への肯定的な確信,の3点が示された。一方で,失敗だと感じる初回面接では,状態や問題の悪化,セラピーへの失望や疑念の高まり,の2点の特徴がみられた。今後の臨床実践において,初回面接を含むセラピー初期に,クライエントが抱く期待と実際とのギャップを扱うことの重要性が示唆された。