著者
齋藤 友介 草薙 進郎
出版者
日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.31-38, 1997-01-31
被引用文献数
1

聴覚障害児(者)の読話に影響を与える要因のうち、音節の見やすさが単語の読話成績におよぼす影響を検討した。見やすさの指標としては単音節同定課題から得られた日本語の直音62音節の正答率である音節可視度(齋藤,1992)が使用された。読話材料は語彙難易度を統制するために、「新教育基本語彙」(阪本,1984)における小学校学習相当の単語から選定された。材料にはVTRに収録された音節可視度と語彙難易度が異なる4条件、計20のランダマイズされた3モーラ単語が使用された。対象は聾学校小学部(4〜6年)に在籍する平均聴力レベルが90dB(HL)以上の重度聴覚障害児40名であった。分散分析による検討の結果、音節可視度は単語読話成績に影響を与えることが確認され、さらに、単語読話条件における音節の同定成績は、易しい語彙難易度の単語において、単音節同定課題における成績を上回ることが示された。
著者
川崎 億子 草薙 進郎
出版者
日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.11-19, 1998-09-30

トータル・コミュニケーションの理念に則り、手話を導入し「聴覚手話法」で指導を行なっているA聾学校幼稚部のコミュニケーション方法を取り上げ、幼児の発話を分析することで、幼児たちの活用しているコミュニケーション手段の実際を明らかにしようとした。分析の結果、(1)幼児たちは、自分の活用できるあらゆる手段を組み合わせてコミュニケーションを行なっていた。(2)1発話の構成要素が年齢に伴って増加するとともに、そこで用いられるコミュニケーション手段も動作を中心とした前言語的手段から、音声語・指文字・手話を中心とした言語的手段へと変わり、コミュニケーションの発達の順序性が明らかになった。(3)発話の機能の面では、年齢に伴って他者とのやり取りに関わると思われる機能が増えることが分かった。(4)音声語と指文字・手話が同時に使用されるなど、手段が複合化して用いられることが分かった。