著者
白井 杏湖 河野 淳 齋藤 友介 冨澤 文子 野波 尚子 太田 陽子 池谷 淳 塚原 清彰
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.576-582, 2018-12-28 (Released:2019-01-17)
参考文献数
26
被引用文献数
1

要旨 : 人工内耳 (以下 CI) を装用する中学生40人を対象に, 相対式学力検査である教研式 NRT (国語) を実施し, 5段階評定値 (評定5が最良) を確認するとともに, CI 手術時年齢, CI 装用期間, 直近の CI 装用閾値および語音聴取能, WISC で評価した動作性知能 (以下 PIQ) ならびに言語性知能 (以下 VIQ), 在籍する学校種, との関連について検討した。国語学力の評定値は,「読み」「書き」ともに評定2が最も多かった。国語学力と, CI 手術時年齢, 装用期間, 装用閾値および聴取能においては, 有意な相関を認めなかった。他方, 国語学力と VIQ および PIQ, 学校種は有意に関連していた。「読み」では PIQ と r=0.4, VIQ と0.6,「書き」では PIQ と0.6, VIQ と0.7,「読み」と学校種は0.50で相関が示された (p<0.01)。しかしながら, 偏回帰分析により VIQ の影響を固定すると, 学校種と「書き」との関連は消失した。
著者
齋藤 友介 草薙 進郎
出版者
日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.31-38, 1997-01-31
被引用文献数
1

聴覚障害児(者)の読話に影響を与える要因のうち、音節の見やすさが単語の読話成績におよぼす影響を検討した。見やすさの指標としては単音節同定課題から得られた日本語の直音62音節の正答率である音節可視度(齋藤,1992)が使用された。読話材料は語彙難易度を統制するために、「新教育基本語彙」(阪本,1984)における小学校学習相当の単語から選定された。材料にはVTRに収録された音節可視度と語彙難易度が異なる4条件、計20のランダマイズされた3モーラ単語が使用された。対象は聾学校小学部(4〜6年)に在籍する平均聴力レベルが90dB(HL)以上の重度聴覚障害児40名であった。分散分析による検討の結果、音節可視度は単語読話成績に影響を与えることが確認され、さらに、単語読話条件における音節の同定成績は、易しい語彙難易度の単語において、単音節同定課題における成績を上回ることが示された。
著者
野波 尚子 河野 淳 冨澤 文子 芥野 由美子 鮎澤 詠美 南雲 麻衣 西山 信宏 河口 幸江 白井 杏湖 鈴木 衞 齋藤 友介 池谷 淳
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.320-325, 2014 (Released:2015-02-05)
参考文献数
9
被引用文献数
2

当科にて80歳以上で人工内耳植込術を施行した4症例の術前から術後の経過を追い,人工内耳装用に伴うQOL改善点や問題点の検討を行った.術後の装用閾値や聴取能は全症例で改善が見られた.術前に比し,活動範囲の拡大や積極性の向上など心理面の変化があり,QOL改善につながったと考えられた.しかし,4症例ともに,ADLに大きな支障はなかったが,機器の管理・操作や異常時の対応などの問題点が挙げられた.対処方法としては,機器管理や操作方法の工夫,術前の十分なインフォームドコンセント,同居者や関係者への協力依頼,異常時の連絡手段の確保などが考えられた.
著者
齋藤 友介 矢嶋 裕樹
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.89-97, 2005-09-25

本研究の目的は, 難聴高齢者を対象として, 聴力低下に対する対処方略と精神的健康の関連性を明らかにすることであった。調査対象は, 日本赤十字社和歌山医療センターを利用し, かつ感音性難聴と診断された者193名とした。調査実施に先だち, 対象者に口頭にて調査の趣旨ならびに結果の利用方法について説明し患者の同意を得た。調査は言語聴覚士による質問紙を用いた半構造化面接法により実施した。統計解析にあたって, まず, 15項目3下位尺度(問題解決型対処, 情動調整型対処, 回避型対処)からなる対処方略尺度を開発し, その構成概念妥当性を確認的因子分析により検討した。結果は, 対処方略尺度の構成概念妥当性を支持するものであった。次いで, 各種対処方略と精神的健康の関連性を検討したところ, 問題解決型対処と回避型対処はいずれも精神的健康と有意な関連性を示さなかったが, 情動調整型対処は精神的健康の悪化と有意な関連性を示していた。以上の結果を踏まえ, 難聴高齢者における今後の対処方略研究の課題について考察した。