著者
草野 晴美
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.223-236, 2009 (Released:2010-02-23)
参考文献数
23
被引用文献数
2 1

湧水性端脚類の1種,ヒメアナンデールヨコエビJesogammarus fluvialis Morinoの地理的分布と生息場所の環境ついて,1986年から2006年にかけて調査を行なった。東海から中部にかけての広域調査により,本種は鈴鹿山脈周辺と富士山周辺の2つの地域に分かれて分布することがわかった。高密度の生息は湧水源流周辺に限られ,湧水が流入する河川本流では生息しないか,または密度が低かった。また本種が生息していた湧水流には,5つの共通する特徴が見られた。すなわち,(1)水温は10~17℃の範囲内である,(2)底質は砂礫である,(3)平野部または平坦な地形にある,(4)開空度が高い,(5)沈水性または抽水性の水生植物が繁茂する。本種はこのような湧水流でミズムシや水生昆虫などともに,主に水生植物に付着して生息していた。また微小分布の調査からは,密な植物体に密集する傾向があること,スラッジの堆積やエビや魚などの捕食者の存在が生息を抑制する要因となっていることが示唆された。
著者
草野 晴美 伊藤 富子
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.193-201, 2004-12-20 (Released:2009-06-12)
参考文献数
13
被引用文献数
1 3

北海道千歳川水系における淡水性ヨコエビの分布を調べたところ,本流にはトゲオヨコエビEogammarus kygi (Derzhavin),支流にはオオエゾヨコエビJesogammarus jesoensis(Schellenberg),湧水源流付近にはエゾヨコエビSternomoera yezoensis(Uéno)が生息していることがわかった。また千歳川支流のひとつ,内別川におけるオオエゾヨコエビとトゲオヨコエビの調査から,(1)2種の分布は,隣接するにも関わらず重複が少なく,分布境界が明瞭であること,(2)その分布境界の上流と下流で河川の物理的な環境に差異は見られないが,産卵後サケ死体の現存量に有意な差が認められること,(3)2種とも消化管に植物質,動物質の餌を含むが,トゲオヨコエビの方がオオエゾヨコエビより動物質の餌,特にヨコエビ破片を含んでいる頻度が高いこと,が明らかになった。これらの結果から,オオエゾヨコエビとトゲオヨコエビの分布を決めている要因について,(1)トゲオヨコエビが千歳川下流から遡上することによってオオエゾヨコエビよりあとから上流域へ分布を広げた,(2)トゲオヨコエビは動物性の餌資源をより多く必要とするためサケ遡上区域(産卵後サケ死体の分布)と重複するように分布し,オオエゾヨコエビは貧栄養的な支流に追いやられている,(3)2種間に捕食などの直接的な関係があることによって分布が排他的になっている,という3つの可能性を考察した。