著者
草間 博之
出版者
東京工業大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2012-04-01

遷移金属触媒によるアルキンの求電子的活性化を基盤とする同一時空間集積化反応に関するこれまでの検討により、o-アルキニルアニリンから調製したイミンに対してビニルエーテル類の存在下で塩化白金触媒を作用させると、金属含有アゾメチンイリドの生成を経てピロロ[1,2-a]インドール骨格を一挙に構築できることを明らかとしている。この反応は様々に官能基化された基質に適用可能な優れた手法である。本年度は、この反応を利用してインドールアルカロイドの一種であるyuremamineの全合成研究を行った。上述の金属含有アゾメチンイリドの付加環化反応によりyuremamineの基本骨格を構築した後、水酸基ならびにレゾルシノール基の立体選択的導入を経て効率良くyuremamineの提案構造を構築することに成功した。上記の反応とは異なり、アルキン部位をプロパルギルエーテル誘導体とし、求核部位をアミンとした基質を用いると、これまで報告例のほとんどない触媒的なα,β-不飽和カルベン錯体中間体の発生が可能であることを見いだした。すなわち、プロパルギルメチルエーテルに対し、電子豊富ジエンの存在下で適切な白金触媒を作用させると、アルキン部位へのアミンの付加とメタノールの脱離によりα,β-不飽和カルベン錯体中間体が生成し、これが電子豊富ジエンと[3+4]型の付加環化を起こすことで7員環の縮環した三環性インドールを一挙に与える。この反応はこれまでに合成例のないambiguine類の合成に有効と期待し、モデル化合物を用いたambiguine骨格の構築を試みた。その結果、シクロヘキセン部位をもつシロキシジエンを基質とすることで、四環性インドールを一挙に構築することに成功した。本研究で開発した同一時空間集積化による多環性インドール骨格構築法は、より多様な生物活性物質の高効率合成に適用可能と考えられる。