著者
荊木 聡
出版者
日本道徳教育学会
雑誌
道徳と教育 (ISSN:02887797)
巻号頁・発行日
vol.335, pp.53, 2017 (Released:2019-09-02)

道徳科では、ねらいへのアプローチ方法がより多面的・多角的で多様性に富む方向へ拡張される。タブーを排した柔軟で斬新な実践にスポットが当たるのは必定であるが、他面、60年間に亘る我が国の道徳教育に包蔵された豊かな叡知を継承・活用するという方向性も極めて重要である。そこで、まず「読み取り」の意味を再確認するとともに「価値の一般化」を再評価した。次に、具体的な教材を通して生徒の実態および議論する場の重要性を明確にした。さらに、それらを踏まえつつ、道徳的価値の自覚を促す視座「価値認識」・「自己認識」・「自己展望」を導入し、授業実践に臨んだ。アンケートの結果からは、中学生の「考え、議論する道徳」に対する「興味関心」や「必要性の実感」が向上するとともに、教師においては議論が停滞したときの対処法等に困難や不安を感じている情況が明らかとなった。